雲影二つ
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う。
そういう御方だったはずなのだ。
それではつまり――姫様が、戦場に?
死にたがりが集う、あの澱んだ所に向かわれたの?
あの、心根お優しい姫様が自ら?
そこまで考えて、ルイズは自分がいつの間にか才人と顔を見合せているのに気付いた。
いささか慌てて目を逸らす。
自分が一瞬何をしようと考えたかに思い至り、全力で頭を振るう。
姫様を助けて。
そうサイトに命じようなど、いったい何を血迷ったというのか。
根本的な問題として、今日中には陥落してしまいそうなラ・ロシェールまでどうやって行かせるつもりなのか、わたしは。
馬ではまず無理だ。
先日のアルビオン行きの際でさえ、半日は掛かった。
途中、馬を換えながらの力尽くでも、だ。
それでは、どう足掻いても到底間に合わない。
では、サイトが"お宝"と称して持ち帰ってきた玩具がらくたはどうか?
……引き合いに出そうと思ったわたしがバカだった。
あんなモノでは、そもそも空を飛べるはずが無い。
よしんば本当に空を飛べたとして、軍用風竜が数匹がかりで運ばないといけないような重たいものが、竜のような速さを出せるとも思えない。
そんなものが戦場に出て行っても、竜騎士のいい的にされるだけだ。
そこまで考えて、ようやっとそれに思い至る。
そう、それを頼むことは即ち、サイトが戦場に出るということだ。
"素早い素人"を戦場に向かわせて、アルビオン"軍"を相手に戦えと?
そんなバカげたことを命じようとしたのか、わたしは。
あんな玩具一ッで三千相手に何が出来ると言うのか。
せめて艦だけでも?
あの玩具と艦舶の間にどれだけサイズ差があると思っているのか。
あの玩具を兵と考えれば、艦は城。小さくても砦だろう。
ただの一兵で城が陥とせる理屈など、あるはずもない。
では、姫様を安全な場所まで連れ出してもらうというのはどうか。
……悪くは無い作戦だと、少しだけ思った。
だが、安全な場所とはどこか?
トリステインは陥落する。
――レコンキスタに囚われた王族の死が免れないであろうことは、アルビオンで既に証明されたことだ。
では、ゲルマニアへ?
――それは即ち、姫様がかの君主に嫁ぐということに他ならない。
出来るならば、避けたいところだ。
姫さまの精神衛生上。保留。
ガリアはどうか?
――かの国はトリステイン・アルビオンと同じ
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