雲影二つ
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にあった。
朝食を済ませたルイズと才人は、王宮からの迎えを待つべく、学院の正門前に立っていた。
もとい、才人の方は門柱にもたれていた。
……些細なことか。話を進めよう。
ルイズが未だに出来ていない詔を前にしてどうしようかと軽く目を虚ろにしながら震えていたり。
才人がそれを呆れ気味の目で眺めていたり。
それを指摘して軽い口論になったりもしていたが、本筋との関連は薄いので割愛。
重要なことキーポイントは、三点。
一つ。結局この日、王宮からの迎えは学院を終ぞ訪れなかったこと。
二つ。鷹馬ヒポグリフを駆る一人の兵士が、二人に目もくれずに門の内側へ飛び込んでいったこと。
三つ。
――それを、二人が追いかけてしまったということ、である。
この日、老オスマンは珍しいことに朝っぱらから忙しかった。
まあ、それも仕方のないことか。
老は結婚式に出席する為、ゲルマニア首都へ向かわなければならない。
往復のため、どう短く切り上げようとも三日間は学院を空けることになるのだ。
その間、書類を代わりに処理してくれたであろう秘書はもう居ない為、帰って来た後に地獄を見ないで済むよう今あるものだけでも片付けてしまおうと粉骨砕身している、というわけだ。
「……こんなことなら、フーケを官憲に突き出すんじゃなかったかのぅ」
結局マトモな評価も賞罰も返ってこんかったし、などと若干危ないほうへ思考を突っ走らせ、ボヤきながらも手は止めずに老は書類を片し続ける。
そんな不毛とも思える空間が崩されたのは、書類のような4本の柱……もとい、柱のように聳える4つの書類の山が、そろそろ3つになろうとしていた頃のこと。
扉が、乱暴に叩かれた。
「何用かね?」
老が尋ねるが、返事はない。
なにせ、問い掛けの途中でドアは弾かれるように開かれていたから。
開いたドアの向こうに居たのは、物理的にも精神的にも青褪めた一人の兵士。
大丈夫かと気遣う老に首を振り、兵士は口を開いた。
「王宮より、魔法学院への通達です。
……申し上げます。
『アルビオンの親善艦隊が、トリステイン送迎艦隊を"奇襲"。
アルビオンの宣戦布告を受諾した我らが "王軍"は、ラ・ロシェールに布陣しました。
これに伴い、姫殿下の婚姻は無期延期と相成ります。
学院におかれましては、安全の為にも生徒及び教職員への禁足令を願います。』
――以上です」
がたりと、老は腰を浮かせた。
「宣戦布告じゃと?
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