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fate/vacant zero
雲影二つ
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ぶねえ。

 危うく戦場手前でエンストフラグが立つところだった……。



 ヘアピンターンを終え、自動操縦(ただ安定させた姿勢でまーっすぐ飛ぶヤツだ)をONにする。

 そこまで終わらせると……ぐったりと、シートにその身を預けた。


 体の中身を掻き雑ぜられたような、ずっしりとした気だるさ。

 無事(では確実にないが)、空を飛ばすことには成功した安堵。

 それらから生じる凄まじい脱力感を、手っ取り早く追い払うべく──



「わりぃデルフ。ラ・ロシェール辺りが見えたら起こしてくれ」


 寝る。


「ぇ、ちょ、寝んの? 寝て大丈夫なんかこれ? 落ちたりしねぇ? ってもう寝てるし相棒……」


 デルフのぐだぐだな疑問の群れを尽くスルーして、目を閉じた。

「──」

 寝よう。

「……、……」

 寝るんだ。

「……! ──、────ろ」

 寝るっつの。

「…ぃ……、ぉ…ろ……!」

 寝るって……、

「通…す………ぞ! …ぃ棒、起き…ってば!」

 ああもう!

 ものの数秒と眠れやしねぇ。



「デルフ……頼むから、ほんと10分くらいでいいから寝かして「相棒、いつまで寝ぼけてんだよ! 街も艦隊も、もうとっくに見えてんぞ!」

 何ィ!?」

 重い目蓋をガッと見開き、前方に広がる大地を舐めるように視線を流す。


 映るものは――草原、沼、草原、草原、大きな池、というか湖。

 ……ん?



「どこだよ。綺麗な湿地帯しか見えねえぞ」

「前じゃねえよ、右見ろ右! 右向いて右の方!」


 右を向いた。

 ……沼、森、草原、山──山……山?


 山が見えた。

 カルデラの如き盆地に岩肌の街を擁する山が。

 峰の一部にマッチ棒の頭程度の大きさの古木が聳そびえる、紛う事なきラ・ロシェールの姿が、霞の向こうに確かにあった。


 あったが。



 右を向いた視界の、なお右に偏った位置にそれが見えているということは……



「やっべ、方向間違えた?

 っていうか、なんでもう着いてんの!?」

「いやいやいや。相棒が目ぇ閉じてからもう随分経っ──てそれどこじゃねえって。
 ほれ、早く進行方向もどさねえと、このまま行ったらガリアに入っちまうぜ?」


「……だな」


 急ごう。と。

 回頭するべく、足元のペダルを右足で──



「……ん?」



 右足が──



「ッ?」


 震えて、踏み込めない。



「この──く――ッそ――! なんで」
「どしたい、相棒。なんだって動
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