雲影二つ
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虫の居所が悪い。
午前の授業が始まる前の喧しい"風"の教室。
一人だんまりと本を睨んで・・・いるわたしの様子を表すのに、これ以上的確な文はなかったろう。
理由はとてもはっきりしている。彼絡みだ。
あの"宝探し"が終わってすぐの任務から、帰還した日。
わたしが泥のように眠りについた日に、彼は主人との仲違なかたがいを解消していたらしい。
翌日の朝食後、どこか申し訳なさそうにした彼がそう教えてくれた。
それは歓迎すべきことなのだから、気にしなくてもいいのに。
……そう、それ自体は・気にすることではないのだけれど。
問題は、彼に魔法を教えることの出来る時間がごっそりと減ってしまったこと。
昼食後の休みと夕食前後の休み、合わせてほんの4時間しか教えることが出来てない。
それでも充分助かっていると彼は言うけれど、やはり付きっきりだった7日間の成長を見ている分、もっと長く教えていたいと思ってしまう。
ぶちまけて言うと、教え足りない。
眠る時に彼が側に居ないのが寂しい、などという理由ではない。
断じてない。
懸想などしている余裕も身分も、私は持ち合わせていないのだから。
「今日はまた一段と機嫌悪いわね、タバサ。
ルイズにダーリンを獲られたのがそんなに悔しいんなら、一緒についていったらよかったんじゃない?」
隣に座ったキュルケが、的を外した提案をしてきた。
そうは言うけれど。
「許可証が必要」
彼は今日から数日間、ルイズの護衛としてゲルマニアへ向かうらしい。
その彼と行動を共にすると言うのなら、当然ながら最低でも入出国の許可は必要なのだが。
私の場合、その認可を降ろすのはあの従姉イザベラであり。
そもそも、一昨日の今日で降りるような代物でもないわけで――
「くふふ……冗談よ、冗談! んもぅ、可愛くなっちゃってもう。
やっぱりタバサってば、最高の友達ね!」
……気がついた時には、頭を抱きかかえられて頬ずりされていた。
苦しい。
暖かくても柔らかくても苦しい。
というより、いったい今の一連の動きのどの辺りに『可愛い』などと形容される要素があったんだろう。
キュルケの言うことは、時々よく分からない。
「うふふふ……。
それにしても、カタブツ教師ミスタ・ギトーってば遅いわね。
何やってんのかしら?」
そういえば、始業の鐘が鳴らされてから10分は悠に過ぎている。
普段から『遅刻するなど言語道断』と豪語している教師なだ
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