心名残り
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艦の数、砲門の数、船足の速さ、そして統率力。
いずれを取っても、二回り以上は差がついてしまっているように見える。
もはや自分から喧嘩を売るなど、以ての外であった。
そうして自嘲している内に、アルビオン艦隊はトリステイン艦隊と舳先を同じくしていた。
その帆から流された旗信号を、こちら側の信号士が読み取る。
曰く、
【 貴 艦隊 の 歓迎 を 謝 す アルビオン 艦隊 旗艦 ЛL эe ξx иi нn гg тt а уo нn 号 艦長 】。
「艦長名義での謝辞だと?
こちらは提督を乗せていると言うのに、なんともコケにされたものですな」
「よい。
あのような艦を与えられたのだ、凧ふな乗りであれば世界を我が手にしたなどと誤解しても仕方のないことかもしれん」
二人揃って溜息を吐く。
仕方は無いかもしれないが、それでも腹は立つものだ。
「……返信だ。
【貴 艦隊 の 来訪 を 心より 歓迎 す トリステイン 艦隊 司令長官】、以上」
ラ・ラメーが苦さを滲ませながらも号を発し、傍らの仕官が復唱し、さらに帆に張り付いている兵がそれを復唱して、信号を流して二秒。
天球の果てからでも耳に出来そうな轟音が、向かいを航はしる巨艦から響き渡った。
空砲れいほうの残響居残るアルビオン艦隊旗艦レキシントン号、その後甲板にて。
無事その艦長となったボーウッドは、もはや習慣になりつつある今日何度目かの溜め息をたっぷりとぶちまけた。
それと言うのも――
「どうした艦長。なぜ弾を込めんのだ?」
――今のこの艦には、空のАБВいろはたる礼砲すら知らない《上官》が居座っているためである。
「何故、と言われましても、これは礼砲です。
まずは空砲を撃ち敵意のないことを示す、空軍式の作法ですよ」
「私は王家の犬なぞに払う敬意は持ち合わせておらぬ。
構わんから、すぐに弾を込めたまえ。
この艦フネは長射程の新型砲を積んでいるんだろう?」
無茶苦茶を言ってくるこの傍らの《上官》に、ボーウッドはこめかみを押さえたくなる腕を胸の前で組んで抑え込んだ。
《上官》の名は、男爵サーヘンリー・ジョンストン。
クロムウェルの信任厚い貴族議会議員であり……ついでに・・・・今回の『親善訪問』の全般指揮を執り行うら・し・い・艦隊司令長官である。
妙な部分にアクセントがあるが、仕方が無いことと思おう。
如何せん、ジョンストン男爵は、政治家なのである。
彼は実戦の指揮を執ったことなど一度も無
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