心名残り
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いで一目散に城門へ駆け出す彼女に遅れるまいと、近衛三隊は各々の幻獣に慌てて飛び乗り、隊列もロクに気にせず後へと続く。
その彼らの行く先に目を向けていたマザリーニが、茫然と天を仰いだ。
彼とて、アルビオンの戦がもはや避けられぬ段に到ってしまったことには、朝の凶報の時点で薄々と感づいてはいたのだ。
礼砲に撃墜されたアルビオン籍の艦、すぐさま飛んできた返す砲撃かたな……、怪しむにはあまりにも充分すぎた。
だが、早かった。
奴らの侵攻があまりにも早すぎたのだ。
平和に奪われた錬度をもういちど奪り戻すには、一ヶ月という時間はあまりにも短か過ぎた。
長く戦を続け疲弊したとはいえ、それに勝利した彼奴らの兵艦と潰やり会っては、勝てる気がしないのだ。
だからこそ局所的な損耗は無視してでも、少しでも多くの時間が欲しかった。
欲しかった・・・のだが――
「よもや、それで姫様に先手を奪られてしまう破目になるとは……私も年かな」
それこそ、姫殿下が生来根っからの御転婆娘であったことすらも忘れてしまっていたとは。
どうやら自分は、内外の政にばかり気を取られすぎて、政毒にすっかり染まってしまっていたようだ。
姫様に言われるまで切り捨てようとしていた"局所"とて民であったことに気づかなかったなど。
それは自分自身最も嫌っていたコトであったはずなのだが。
いったい、いつ頃から自分はこうなっていたのだろうか。
ゲルマニアと同盟を結ぶと決意した折か?
はたまた、斃れられた先代に代わって政治に携わるようになった時か?
それとも。10年前。
あの大馬鹿者に今回の様に助けられた、あの――
「――卿。枢機卿!」
呼ぶ声に、我知らず閉じていた瞼まぶたを開く。
後を追ってきたらしい一人の文官メイジが、正面に立っていた。
近い。
「卿。アルビオンとゲルマニアへの特使の件ですが、どうなさいますか?」
事此処に至って、何を分かりきったことを聞くのかと嘆息する。
「……ゲルマニアへの救援要請だけでよい。
あの生臭坊主めの腕は、どうやら己の版図よりも長く伸びてくる様ですからな。
そんなバケモノのいるアルビオンなどに使者に出して、貴重な戦力をむざむざ目減りさせては、後世の笑い者にされてしまうわ。
――ああ、そうだ。誰か、私の馬を連れてきてくれんかな」
きょとんと、周囲に残っていた者たちが顔を見合わせる。
「馬、ですか?
かしこまりましたが……どちらへ?」
「何処へ行くか
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