心名残り
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ちで、先ほど聞かされたトリステインの噂を呟いた。
「単独でゲルマニアが張った包囲網の一角へ突撃し、ありったけの風石を一斉に起動することでその艦体ごと包囲網に大穴を開けた戦艦、か。
あれだけ痛めつけられた艦ですらこの有様になるのだ。
ただの噂と切って捨てていては、こちらの身が保たんやもしれんな……」
そのぼやきに"彼"は言葉を返すことなく、ただ頷きで返した。
さしもの彼も若干肝を冷やしたらしく、目蓋上を伝っていた汗を親指で拭っている。
「あまり間を置いては、艦隊が戻ってきてしまうな……仕方ない。
子爵、竜騎士隊を率いて下の征圧を頼めるか?」
「承知。すぐ取り掛かりましょう」
踵を返し、指揮下の竜騎士隊の元へ向かう彼の背中と揺れる後尾髪を頼もしく感じつつ、ボーウッドは艦隊へと命令を下し始めた。
「各艦に通達、輸送艦は上陸部隊を下に降ろす準備を始めろ!
子爵が下を制圧次第、順次降下を開始するぞ!
それ以外の艦は竜騎士隊の援護だ!
先の様な失態は繰り返すなよ! ……返事はどうした!」
『ЕсYes сирsir!』
今度こそ紛れもなく、アルビオン艦隊は一丸となって唱和した。
未だ意識を取り戻さぬ大虚けジョンストンを除いて。
まあ、起きていても困るというか邪魔なだけなのだから、何も問題はないのだが。
さて、ここで時空を"現在"に戻そう。
ここトリステイン王城イースの会議室では、宮廷や王都近郊を任地とする主要な文官武官が顔を付き合わせ、あまりにも突然のアルビオンの宣戦布告というこの非常事態に侃々諤々かんかんがくがくの火花を飛ばしていた。
下記は彼の国より齎もたらされた文ふみの内容だ。
『この文は貴国艦隊の故ゆえなき砲撃により、我が親善艦隊の巡航艦一隻が撃沈せしめられし事実に抗議するものである。
我ら神聖アルビオン共和国は自衛の為、諸君らトリステイン王国に対しここに会戦を宣言する』
と、大方このような旨である。
神聖皇帝クロムウェルの署名入りというダメ押し付のの宣戦布告文だ。
先のラ・ラメー伯の艦隊より訪れた急使と入れ替わるように届けられたこの文ふみこそが、二刻よじかんという長時間に亙わたってこの会議を紛糾させ続けている火種であった。
「やはりゲルマニアにも使いを出すべきでは?
かの戦力抜きでは、我らの兵員が徒いたずらに浪費されるばかりですぞ!」
「いや、今はアルビオン艦隊へ出した使者が戻るのを待つべきだ。
いま事を荒立てては、彼らの努力が無になってしまう」
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