心名残り
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も切ったところで、ラ・ラメーは甲板の端ハンドレールから空へと躊躇いなく跳び出し、目標へと杖を振るった。
そのまま振り向くことなく重力に身を任せるラ・ラメーの背後。
メルカトール号はアルビオン艦隊左翼に浮かぶ輸送艦・・・サラトガ号の帆柱に艦体中央をブチ抜かれ、その8年に亘わたる生涯を終えた。
己の齎した戦果も、己が駆っていた艦の最期も、その目で認識することなくただ大地へと近づくラ・ラメー。
「1隻半……運がよければ3隻か。
それでようやく六分の一……戦力比は数で4:7、質で……ふむ。
ちらと見えたあの様子ならば、質は存外に五分やもしれんな」
後は、フェヴィスが冷静に指揮を取れるかどうか。
それを側で見られないのがいささか残念だが、仕方のないことか。
「図らずも、十年前の焼き直しになってしまったか?
……負けてくれるなよ、フェヴィス。今度こそは……」
今この瞬間にも空を滑り、精神力たましいのからを綺麗さっぱりと使い潰した後の、久しぶりの絶望的倦怠感ねむけに襲われているラ・ラメーだが、それでも詠唱を留めはしない。
頭痛に眩暈いしきこんだく、動悸に息切れしんぱいふぜん、血涙に血の衣を後に引きながらもうさいけっかんはれつ、それでも約束の為に彼は唱える。
ただ一度。わずか一度の速度軽減ブレーキを掛けるだけ。
生きる為のその一度レビテーションを唱えきった彼の体が一瞬だけ浮かび、集中が途切れてまた滑おちる。
体も意識も落ちゆく中、遠ざかる彼の意識が最後に把握したのは、ぼやける視界に映る一面の深すぎる緑―――
「……慌てるな馬鹿者!
敵は先の一隻だけだ、もう残っておらん! 撃ち方やめ! ……処置班、被害を報告せよ!」
混乱するレキシントン号の乗員たちに矢継ぎ早に指示を出すボーウッドは、士爵の手によってすぐそこに倒れ伏している大馬鹿者ジョンストンを今すぐにここから蹴落としたい気分で一杯だった。
万歳の連呼によって対応が遅れている間に、彼の艦は肉薄してしまった。
その艦から飛び出してきた魔法使いメイジが放った……恐らく『炎弾フレイムボール』、の直撃を発射寸前の大砲に受けたヒューストン号が炎上墜落し、影にいたアストリア号が潰されまきこまれた。
挙句、懐に飛び込んできた敵旗艦によって輸送船サラトガ号は物理的に直接船体を潰へし折られ、数多くの上陸兵たちと共に心中させられた。
相手はただの旗艦一隻。
その僅か一隻によって艦隊左翼は半壊、かつ上陸要員の四分の一を喪うというこの有様。
ボーウッドは臍を噛むような面持
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