心名残り
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場合、帆などあっても邪魔でしかない。
帆を立てたままこんなことをしては、鉄の壁に正面衝突するような空気抵抗で帆柱ごと凧体せんたい崩壊するだろう。
それでなくとも、風石を持たぬラインでは一瞬、同じくトライアングルでも数秒で精神力を根こそぎ持っていかれて昏倒するような燃費の悪い手段である。
この手段のみで航行するとなれば、風石がそれこそ千万単位で必要になるだろう。
毎秒一個くらいのペースを保てれば上質な方なので、千個で16分、万個で1と四半刻2じかんはん程度が限界だろうか。
少なくとも、万の風石を戦艦に積載していては足の踏み場もないのは間違いないので、どの道短時間しか持たないのは間違いない。
この手段は、基本的には緊急回避専用だということである。
――では、ラ・ラメーはどうやって艦を航行しているのか?
「風石の『飛行フライ』で一瞬加速し、風石の『浮遊レビテーション』によって高さを取り戻しつつ惰性で進む。
言葉にすればただそれだけの単調な作業だが、この楽器を奏でるような躍動感リズムと緊張感スリルは幾つになっても変わらんものだな」
撃ち出された弾を横滑り気味に回避・・しながら、ラ・ラメーはさらに彼我の距離を詰める。
それは彼が操舵士として初めて戦場に出た時に閃き、あまりの大損耗により軍所有の風石が枯渇しかけたことに眩暈を覚えた上官の手で制裁される破目となった特殊航法。
ラ・ラメーは今に至るまで、その時と10年前の二回を除いてこの航法を用いていない。
使えば精神力枯渇による昏倒は必至、直下地震より幅の大きな上下震動にまともに同乗できる乗員も再起可能な艦体も皆無という片道切符過ぎる航法だが、速度と機動性を保ったまま少しでも長い時間を余裕をもって航行可能な、いいとこどり(しようとした)航法なのである。
そうして相互距離が300mメイルを切り、三度放たれた砲弾を上に飛んで艦の腹で避けたところで――風石が尽きた。
100を数える風石がメルカトール号には積載されていたはずなのだが、この航法の風石消費方法は『飛行』法を基本とするのである。
1秒1個の消費量が5秒1個程度になってはいるものの、それでも足りない。
しかも加速や回避行動を取る都度に風石は消耗されるのだ。
圧倒的に風石が足りないことに変わりはなかった。
とはいえ――
「ここまで届いたのならばもはや瑣末事、大した問題ではない……か……!」
後はただ慣性だけで空を往くメルカトールの甲板を、薄れかかる意識の中で必死に蹴飛ばし駆けながら、ラ・ラメーは一つの呪文を詠唱する。
艦の彼我距離が50を
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