灯蛇
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「ぐぉおおぉおぉぉおお……、こ、こらタバサ、いきなり何すん……っ」
苦悶しながら文句を言おうとした才人だったが、目の前、というか腹の辺りで転がってるタバサの顔を見て、口を噤つぐんだ。
なんともあどけない、年相応の寝顔がそこにあったから。
「ちぇ……、起きたら、何やってきたんだか聞かせてもらうからな。覚悟しとけよ」
ぼやいてるんだかニヤケてるんだかわからない表情で、才人はタバサをベッドに横たえなおす。
寝かしたタバサの顔から眼鏡を外し、倒れた杖を立て掛けた才人は、朝食までの暇な時間を潰すべく、デルフを引っつかんで部屋を後にした。
ただ、起き抜けだったせいだろうか?
杖を拾った時にルーンガンダールヴが光を放っていたことにも、部屋を出る時に白いイタチっぽいものが足元をすりぬけていたことにも、才人は気付かなかった。
この時は、まだ。
その朝、コルベールは自身が飼っている怪鳥のけたたましい鳴き声にて目覚めた。
頭を振り、窓の外を見て、いつの間にか夜が明けつつあることに気付く。
才人から油壺を受け取ってからの三日間、油の性質を特定するべく睡眠も授業も放棄していた分のツケが回ってきたのか、彼は自分がいつ眠ってしまったのかも覚えていなかった。
突っ伏していた机の上には大量の試作品しっぱいさく入りビーカーの他、空になったアルコールランプ、その上に乗せられたでろりとした黒い液体――石炭の溶液の入ったフラスコが。
フラスコの先から伸びるガラス管の先には水の満ちた盥たらいに浸ひたされた巨大ビーカーが床に置かれており、触媒から抽出されたらしいぎりぎりゾル状の液体が、褐色の下層と淡いオレンジ色の上層に綺麗に分離してそこに堆積していた。
その液体を目にしたコルベールは、最後の仕上げが残っていたのを思い出した。
抽出された二層の液体のうちオレンジの層を別のビーカーに掬すくい移す。
それから才人から預かった燃料に『解析ディテクト』を掛けなおし、得られたイメージを意識しながら、オレンジ色な液体へと手早く精密に『変性デネトレーション』を唱えた。
魔法は定められたイメージに従って起動する。
液体に含まれていた不純物を、目的イメージ通りに錬り変える。
そうして反応が収まり、液面に浮かぶ膜を掬すくってみれば、僅かな濁りも無くなった無色の液体が出来上がっていた。
コルベールはその液体と預かった油を交互に『解析ディテクト』し、その差異がなくなったことを確かめると、ぷるぷると身体を震わせて快哉を叫んだ。
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