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fate/vacant zero
灯蛇
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「『麗うららかなる今日という日に』……なんか違うわね。
 『この麗うるわしき日に』……そうね、まだこっちよね。

 で、名前を挟んで、『始祖の御光臨を願いつつ』……ぅうー。なんで私がこんなこと……」


 部屋に篭こもって詔みことのりの序文に悩んで、外の騒ぎに気付いてもいなかった。


 頑張れルイズ、式まではもう二週間を割っているぞ。









 その夜。


 結局午後まで徹底的に使い潰してようやくホールを磨き終えた才人は二人と分かれ、居候中のタバサの部屋に帰ってきたのだが。



「この部屋、こんなに広かったか?」


 今、この部屋の主は居ない。

 昼間にキュルケが言っていたように、泊り掛けで何処かへ出かけているようだった。


 デルフを立て掛けパーカーを椅子に引っ掛けた才人はぐったりベッドに倒れこみながら、先述のセリフを口走っていた。

 その唯一の目撃者であるデルフがそれを茶化す。



「どうしたぃ相棒。寂しいんか?」

「おま、ちょっと待て! そんなんじゃねえゃッ!」


 身体を仰向けに転がしながら、一瞬見えたデルフに怒鳴る才人。


 だが苦も無く身体をひっくり返せた才人は、その感覚に違和感を覚えた。

 そういえば――



「こっちに来てから一人で寝るのって、これが初めてだな、って思っただけだ」


「……さよか。
 ま、今生の別れでもあるめえし、今日んとこはとっとと寝るのが一番さね」

「だから、そんなんじゃ……。まあいいや。
 おやすみ、デルフ」


「ああ。おやすみ、相棒」



 なんだかデルフが苦笑いしているような気もするが、気にしたら負けのような気がした才人は、そのまま目を伏せた。

 途中、今日は魔法の特訓をし損ねたことに気付いたが、そんなことも全部ひっくるめて眠気の濁流に押し流された。







 それから2日が過ぎた日の朝も朝、空が微かに白みだした頃。

 何かの羽ばたく音と、うんうん言ってる唸り声に目を覚ました才人が身を起こすと、丁度窓から部屋に飛び込んできた影が目を掠めた。



「んにゃ……タバサ、か?」


 影はそれに答えず、ふらふらとベッドの方に歩いてきた。



「……タバサ?」


 ふらふら……ぽてり、かたん。

 なんとも間の抜けた擬音で、影は持っていた杖を手放すと。



「おい、タバぐほぉう!?」



 ベッドの才人にむかって倒れこんだ。

 わりと勢いがついていたこともあって、才人はヘッドパットを腹に喰らってしまって悶えている。


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