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fate/vacant zero
灯蛇
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ている、燃料タンクの隅々から風で巻き上げた微量なオイルの臭いを嗅いで、何やら羊皮紙にメモをしている。

 『抵抗レジスト』が機体全体に掛かっていたせいか、かなりの長期に亘わたって放置されていたわりには変質していない。


 ……ような気がするというか変質してたら困るので大丈夫と信じる。



「これと同じ油があれば、あの『飛行器』とやらは飛べるのだね?」

「多分。どこも壊れてなければ、ですけど」


 ふむ、と先生は大きく頷き、手を打ち鳴らして宣言してくれた。



「おもしろい! 調合には多少時間が掛かるが、やらせてもらおう!」


 そうして卓上のアルコールランプに火を灯した先生は、羊皮紙が発火しそうな勢いで羽根ペンを動かし始めた。

 合間々々でツボの中身を確認するように嗅いでいる先生の思考が、どんな道筋を辿って、どんな答あぶらを導き出すのか。

 どうやってその油こたえを造るつもりなのか。


 その全てに、俺はとても興味が湧いた。



 そうしてしばしの間、先生の背中を見つめていると。


「きみは確か、サイトくんとか言ったかね?」


 その背中越しに、何やら話しかけられた。



 はい、と答える。



「きみは、どこの生まれであったかな?
 きみの故郷では、あの『飛行器』とやらも普通に空を飛び交っているのかね?」


 一瞬、返答に詰まった。


 どうする、正直に言ってしまおうか?

 あれだけの大金を快く肩代わりしてもらっておいて、嘘をつくのは気が引ける。


 でも、タバサに教えた時はすっかり忘れてたけど、王室直属アカデミーとやらに俺のルーンのことがばれると拙いわけで。

 正直に話すか誤魔化すか、すぐ好奇心に主導権を奪われるような足りない頭で精一杯考えて。


 俺の出した結論は――



「その、俺は……、この世界の人間じゃ、ないんです。
 俺も、その飛行機も、いつだかフーケと戦った時の『破壊の杖』も。
この世界ハルケギニアじゃない、どこか別の世界から来たんです」


 正直に話す、だった。

 結局俺は、義理、っつーか借りを無視することが出来ないらしい。


 当然、というのが正しいだろう。

 当然ながら、先生はその手の動きを止め、俺の方へと振り返った。



「いま、なんと言ったね?」

「別の世界から来た、と言ったんです」


 先生はかっちり7秒動きを止め、それから顎を手で撫ぜて後のち、「なるほど」と大きく頷いた。



「……驚かないんですか?」


 と、えらく素早く納得した先生を見て驚いた俺が言った。

 オール
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