灯蛇
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」
「持ってないのか持ってないんだなそうなんだな!?
どうすんだよ、俺だって金なんてさっぱり持ってねえぞ?」
どうも、竜騎士隊に支払う代金が彼らの手元には無い様子だ。
ふむ。
竜騎士隊への輸送料をどこか上機嫌なコルベール先生に立て替えてもらい、学院長から呼び出しを喰らったタバサたちと分かれた俺は、タンク内にこびりついていた油の分析と先生への細かい説明のため、火の塔と土の塔の間、スズリの郭壁かべに構えられた先生の研究室へと移った。
「初めは、職員寮――ほれ、学生寮塔の一階、階段の裏手に通路があったろう? あの男子寮側の通路の先だよ――職員寮の自分の居室で研究しておったのだが、なに、研究に騒音と異臭は付き物でね。
隣室はおろか、男性教員の全員から苦情が来た」
先生はそう説明しながら、郭壁かべの一角に脈絡無く据え付けられた木の扉を開いた。
その途端、油やカビ、鉄臭さなどが入り乱れた、むんとして鼻を突く異臭が内から漂ってきて、俺はとっさに鼻をつまんだ。
「なぁに、臭いはすぐに慣れる。
これと言って人体に害が無いのは私自身で実証済みだ。
とはいえ、ご婦人方の受けはよろしくないらしく、この通り私はまだ独身だがね」
前半も後半もイマイチ信用できないのは、先生の前頭部に目が行ってしまうからだろうか。
中へと促うながす先生についていきながら、ぱっと浮かんだそれを忘れるべく辺りを見回す。
まず目に留まったのは、なにやら怪しげな液体の入った褐色の瓶。
次に同じく不気味な色した液体入りの試験管の群れ。
何に使うんだかさっぱりわからないツボ(棒が内側に立てかけられてる)などが雑然と並んだ、どこぞの理科室を思わせるような大きな木の棚。
それからタバサの部屋で見たものより更にデカイ、一方の壁を埋めるほど巨大な本棚。
ところどころ抜けはあるものの、本で埋まっていない棚はない。
その隣の壁には、ハルケギニアの地図らしい羊皮紙がかけられている。
何故かその地形には既視感デジャヴを覚えたが、多分気のせいだろう。気のせいのはずだ。
他にもコブラっぽい蛇や、平たくて大きな尻尾をしたでっかいネズミっぽい何か、頭が二つある鳥など、よくわからない生き物が個別に入れられた檻が本棚の対面に置かれていた。
そうして俺が好奇心を辺りに満遍なく散らしている間に、先生は例の油を分析し始めていた。
「ふむ……、面白い臭いだな。
私の使っている油とは随分と違う。粘り気もない……」
椅子に座り、机の上に置いたツボに入っ
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