灯蛇
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って、先生? その臭いは……」
鼻をひくつかせて、使い魔の青年が問い返してきた。
ローブの袖を顔に近づけてみると、つい先ほどまで『愉快なヘビくん』試作三号器の製作に当たっていたせいだろうか。
かなり強い油の臭いが、ローブに染み付いてしまっていたようだ。
「いや、さっきまで部屋でこの間の装置を新しく組んでいてね。
気にしないでくれればありがたい。
いや、そんなことよりも……、きみは、これが何かを知っていたりしないかね?
出来れば、教えてもらいたいのだが」
青年は思案顔で頷くと、“それ”が何かを教えてくれた。
『ひこうき』――『飛行器』という名を持つらしいそれは、その名のとおり彼の国では普通に空を飛び交っているものらしい。
言われてみれば左右に突き出した細長い物は翼のようにも見えるし、コレを上から見下ろせば、それはきっと鳥のようにも見えただろう。
その翼は凧フネのもつ皮翼ともまた違っていて、稼動するようには作られていないようだ。
この『飛行器』とやらはどのようにして空を飛ぶのか?
わたしはそれを、とても見てみたくなった。
「では、さっそく飛ばしてみてはくれんかね?」
青年が、困ったように頬を掻いた。
「それなんですが……、先生、これに何の油が使われていたか分かりませんか?」
「? 何のことかね?」
唐突に話が飛んだが、これに油が使われていると言うことだろうか。
俄然、興味がわく。
「えーとですね。
こいつは、あの首の両脇に空いた四角い穴から空気を吸って、圧あつめて、霧にした油を混ぜて、そいつに点火して、あの筒の尻からその爆風を吐き出させて飛ぶんですが」
ふむふむ。
「ひょっとして、その霧にする油が無いのかね?」
「そういうことです。
何の油を使ってたのかもよくわからないんですが」
「なるほど……。
その油は全く残ってないのかね?
ほんの少したりとも?」
食器にこびりついたソースぐらいでも残っていれば、そこから成分を割り出せるのだが。
「タンクの中を漁れば、少しは残ってるかもしれませんが……、ちょっと見てみます」
「お願いするよ」
彼がそう言って『飛行器』とやらの方に歩き出そうとすると、ミスタ・グラモンが彼を何やら呼び止めた
「取り込み中のところ悪いのだが、あの方たちに運賃を支払わなければ……」
「金、金って、貴族のクセに細かい奴らだな。
払えばいいじゃねえか…………、って、ひょっとしてお前?」
「きみ、軍人は貧乏なんだよ
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