灯蛇
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から、
「東に向かって、飛んでみたい。すぐにってわけじゃないけどな」
そう答えた。
「東に?
東方ロバ・アル・カリイエにでも行こうって言うの?
呆れたわ。
トリステインから東方ロバ・アル・カリイエに辿りつくまで、いったいどれだけの距離があると思ってるのよ」
「いや、ロバアルカリイエとやらに行くわけじゃないんだ。
そうじゃなくて、こいつがこっちに来た所へ行ってみたいんだよ。
そこに何か、俺のいた世界への手がかりがあるかもしれないだろ?」
才人はそう説明するのだが、ルイズにとってはどちらでも同じことだ。
才人が帰りたがっている。
その一点には、違いがないのだから。
だからルイズは、ゆるく頭かぶりを振った。
「あんたは、わたしの使い魔でしょ。
勝手なことしちゃ、ダメ。
だいたい……ほ、ほら、無許可でそんなことしたら、国境侵犯でトリステインが訴えられるわ」
だからダメ、とルイズは人差し指を立てて念を押した。
確かにその通りなのかもしれないが、なんだか邪魔をされているようにしか思えず、才人はむすっとしてしまった。
有耶無耶うやむやの内にまた使い魔扱いされているのも、不機嫌に一役買っているかもしれない。
「そんなことより、手伝って欲しいことがあるの。
もう九日後に姫さまの結婚式が迫ってて、わたし、その時に詔みことのりを読み上げなくちゃいけないの。
でもね、いい言葉が思いつかなくて、困ってるの」
ふぅん、と才人は適当な返事を返した。
自分的に大事なことをそんなこと呼ばわりされて、ムカついたようだ。
さ、F-15イーグルの整備でもすっかね、することないけど。
大人げなくF-15イーグルの方へ歩き出そうとした才人は、襟足を引っつかまれて仰け反らされるはめになった。
軽く、首が痛い。
「あんだよ!?」
「わたしの話、ちゃんと聞いて!」
「聞いてやってるじゃねえか! 右から左へ!」
「聞き流してるんじゃないの! そうゆうの聞いてるって言わないの!
主人の話を聞かない使い魔なんていないんだからね!」
「ここにいるだろうが!」
「自分で言うなぁ! この、バカ――ッ!」
とっくに授業が始まっているため、鳥の声と風の音ぐらいしか他の音がしない広場で言い争う二人。
だが、そんな二人は口汚く言い合う中、そろってこう思っていた。
『ああ、帰ってきたんだ』と。
夜。
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