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fate/vacant zero
灯蛇
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を浮かんでいるのか動きはこまごまとしたものだが、よく澄んだ空ではそれくらいの動きでもよく見える。


 針の先大だった何かが少しずつ大きくなり、やがて賽苺ダイスベリーのタネぐらいの大きさになったとき。



「えっ?」



 シエスタはその正体が十数頭の風竜と、それらによって吊り下げられた曽祖父の形見であることを視認した。







 トリステイン魔法学院に奉職して二十年。

 今年で四十二歳を迎える教員、ミスタ・コルベールはその日、年甲斐も無く興奮していた。

 先日ルイズに破壊された試作装置ユカイなヘビくんの三号器を製作するべく篭っていた彼の研究室の窓から、風竜たちの持つ馬鹿でかい網に吊られて頭上を通過していった未知の“それ”を目撃したためである。


 彼はかつてアカデミーに所属していたこともあるほど好奇心が強く、ハルケギニアでは極めて珍しい研究肌の実践派魔法使いメイジであった。

 それは生まれ持っての性分なのか。

 彼は未知の物を見つけた場合、実際に見て触れて試して調べるべく全力を尽くすのだ。


 その好奇心は年を経ても一向に衰える気配を見せず、今回も過去の例に漏れることはなかった。

 彼の足は考えるよりも早く、取る物もとりあえず“何か”の運ばれていった方、学院の正門の方へと駆け出していた。







Fate/vacant Zero

第二十七章 灯蛇トモシビ







 私が好奇心に惹ひかれるままにアウストリの広場を訪れた時、“それ”の周りには幾らかの人影があった。


 まず、自分と同じように好奇心に曳かれて集まった生徒や奉公人たち。

 それから、見覚えのある軍の竜騎士隊となにやら話し込んでいる、この一週間ばかりの間行方不明になっていたはずのミスタ・グラモン。

 そして同じく行方不明だった、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、そしてミス・ヴァリエールの使い魔ガンダールヴの青年の姿があった。


 この状況からすると、“それ”をこの学院まで運んできたのは恐らく彼らだろう。

 私は“それ”の正体を確かめるべく、こういった不思議なものについて何か知っていそうな、どこか異邦の生まれだと聞いた青年に声をかけた。



「きみ! こ、これはなんだね?
 よければ、私に……おや?」


 青年がこちらを振り向いた拍子に、陰になって見えなかった、どこか安らいだ顔をした奉公人の少女がこちらへと一礼し、そそくさとその場から立ち去っていった。

 少し気まずさを感じた私は、控えめに尋ねた。



「……邪魔をしてしまったかな」

「いえ別にそんなことは……、
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