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fate/vacant zero
灯蛇
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 よく晴れた青い空。白い雲。眩しい太陽。


 今日は虚無ウィルドの日。

 ここトリステイン魔法学院は本日、絶好の洗濯日和である。


 奉公人たちの宿舎があるノルズリの広場では、これ幸いとばかりに宿舎の住人が揃って石鹸せっけん片手に洗濯中だ。

 そんな泡まみれの集団に混じって一人。



「はぁ……」


 シエスタが、天気に見合わぬ重苦しい溜め息を溢こぼしていた。





「ぅぅ。サイトさんたち、いったいどこに行かれたんでしょう……」


 あんなはしたないことをしてしまって、怒ってしまわれたんでしょうか、とか。

 嫌われてしまったんでしょうか、とか。

 そのせいでミス・ヴァリエールにも追い出されてしまったこと、恨んでいらっしゃるでしょうか、とか。


 時々、ひょっとしてミス・ヴァリエールやミス・タバサみたいになだらかなのがお好みなんでしょうか、なんて脇道にもそれたりしながら。

 後から後から不安と後悔の種が浮かんできて、シエスタの胃の腑には、いつ穴が開いてもおかしくないほどの負荷がかけられていた。



 迷惑を掛けてしまった本人に直接謝れば治まる負荷だが、いまこの学院に才人は居ない。


 ルイズに思い切って謝罪と弁解をした翌朝、勇気を出して才人の許――つまりタバサの部屋を訪れたシエスタが目にしたのは、才人らの署名とともに『一攫千金に行ってきます』とだけ書かれ、ベッドの上に放置されていた小さな便箋だけだった。

 それを教師たちに届けて以来、シエスタはずっとこんな調子なのだ。


 才人が本当にこの学院から出て行ってしまうのではないか?

 それが不安で仕方がないのである。

 ましてやその発端が自分となれば尚更だ。


 あの日の自分を責める声がシエスタの中で響き、自分自身を苛んでいた。



 そうして時間を追うごとに落ち込んでいくシエスタが、もう何度目かのため息をついた時のこと。



「あら……、何かしら、あれ」


 回りにいた奉公人仲間の一人が、不意に声を上げた。

 それに気付いたシエスタは知らず知らずに俯いていた顔を上げ、対面、洗い物を掴んだまま首だけがあらぬ方を向いたルームメイトに声をかけた。



「ローラ、どうしたの?」

「あ、シエスタおかえり。
 あれ、何だかわかる?」


 と、ローラはこちらを見ずに尋ねてくる。

 その目の向けられている方向、ヴェストリ広場の方にシエスタは顔を向けた。



 視界の中央辺り、針の先サイズの何かがわらわらと塊かたまって、黒雲のように空を蠢いているのが見える。

 学院からは結構な遠方
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