竜は異界の風を見せるか?
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「それで、だ。キュルケ」
ここは遮るものが何もない風の中、つまり空。
日の出を背にして空を往ゆく、シルフィードの首元辺り。
本を読むタバサが背もたれにしている才人は、正面で背びれにもたれているキュルケに尋ねた。
ちなみにヴェルダンデは相変わらず口の中、フレイムは頭の上である。
「なぁに? サイト」
「『竜の羽衣』って、どういう秘宝なんだ?」
尋ねられたキュルケはあごに指をやると、軽く唸うなって答えた。
「地図には、『纏まとえば千里の空を越える秘宝』って書かれているから……、『風』系の魔法道具アーティファクトじゃないかしら?」
「羽衣……、と言うことは、女性用の服の形をしているかもしれないね。
ああモンモランシー、待っていておくれ!
僕は きっと、君のために『竜の羽衣』を手に入れて見せるよ!」
キュルケの回答ことばに被せるようにして、ギーシュがいつものような軽口を開いた。
「ギーシュ、あんたちょっとはサイトの資金のことも考えなさいよ。
……だいたい、自分で選んでおいてなんだけど、この地図の感じじゃ本物かどうか怪しいわ」
「……またかね?」
ギーシュが、いやな顔をしてぼやいた。
「またとか言わないの。
残りの地図の中で一番マトモそうだったからこの地図を選んだんだけど、なんか変なのよね」
「変って、どんな風に?」
かわらず背もたれにされている才人が訊ねる。
「あのね、これまでの地図って、裏に色々書いてあったでしょ? 秘宝についてとか、注意事項とか」
「ああ、あったな」
「この地図には、その注意事項がまったく書かれてないのよ。
地図の上では近隣の村から歩いて10分もかからないほど近いのに」
キュルケが目の前で広げるその地図の裏側には、先ほどの『それを纏えば〜』の文と、『風の羽衣』という名前だけが書かれていた。
「確かに、なんも描いてないな……。
これもパチモンだったり、とか」
「シャレにもならないことを言わないでくれたまえ……」
肩を落としてげんなりとぼやくギーシュに、少し凹んだキュルケが反論をする。
「ま、まあインチキならインチキなりの売り方って物があるわよ。
世の中にバカと好事家は掃いて捨てるほどいるんだから」
それってまさに俺たちのことなんじゃ、とサイトは思ったが口にはしなかった。
ギーシュも思ったが口にはしなかった。言わない優しさという奴だ。
タバサは本から顔を上げると、才人の肩越しにじっとキュルケを見
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