竜は異界の風を見せるか?
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どうやら老女はそれを伝えるためだけにここまで来たらしい。
「へ? え、はぁ。
食事、ですか。
……は、食事?」
「はい。
お連れのお二方が、ぜひお願いしたいと」
思わずタバサと顔を見合わせて、二人して呆れた溜息をついた。
流石にそれは図々しくなかろうか、とも思ったが、作ってくれたものを放置するのも失礼だ。
多少の肩身狭さを感じながら、二人は老女に従い、村へと降りていった。
その道中でのこと。
「お二方は確か、魔法学院の生徒でしたね?」
老女が、不意にそう溢した。
「(こくり)」
「俺はちょっと違いますけど。まあ、似たようなものです」
二人がそれに答えると、老女は続けてこう問うてきた。
「では、私の孫娘をご存知ではありませんか?
学院の方に、奉公に出しているのですが」
「えーと……、その人の名前は?」
「おや、これはうっかりしておりました。
孫の名は、シエスタといいます」
「「え」」
才人の足が止まった。
タバサが、それに気付いて足を止めた。
「どうなさいました?」
と、老女も立ち止まり振り向いた。
「あ、いえ。
……知ってますよ。
貴族じゃない俺にも、よくしてくれてます」
「そうでしたか。
手紙はこまめに寄越して来るのですが、どうにも気に――」
そう、色々と。
料理が出来て、優しくて、可愛くて……、多分、俺を好いてくれている女の子。
それこそ俺なんかには、勿体無いくらいによくしてくれている。
「――それで、昨日、でしたか。
もう少ししたら帰ると手紙が来たのですが、どうも文に元気がありませんで……。
おっと、足が止まっておりましたな。
先を急ぐと致しましょうか」
……元気がない、か。
多分、この間のことを気に病んでるんだろうけど……。
……俺はシエスタの好意に、何かを返してやれるんだろうか?
顔をじっと見つめてくるタバサに先を促うながしながら、俺はそんなことを考えていた。
その日、才人たちは老女の家……、シエスタの生家に泊まることにした。
『竜の羽衣』を運ばせる竜騎士隊が、今日中にはどうやっても到着しないと踏んだためだ。
竜騎士隊には、『羽衣』を学院まで運ぶ方法はないかと相談されたギーシュが、父親のコネを使って要請した。
初めこそ怪訝な顔をしたものの、ど
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