竜は異界の風を見せるか?
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きたんだろう。
……いやまあ、こっちの世界に来る前に飛び回ってて、帰ろうとしたところを……、っていう可能性もあるんだけど。
情報が足りない。もっと情報が欲しい。
これの持ち主がどこから飛んできて、この丘へ辿り着いたのか。
それが知りたい。
才人がそう渇望して唸っていると、くいくいと半袖が引っ張られる感触があった。
振り返ってみれば、なにやらタバサが端っこをつまんで、才人の顔を見上げていた。
和む。
「ん、どした?」
「これは、飛べるの?」
と、首を傾げて問うてきた。
「わかんね。でも、ジェット燃料――要は油さえあれば多分、飛ばせると思うぜ」
「そう。
……その時は、少し乗せて欲しい」
「……へ?」
才人が、固まった。
「……迷惑なら「いや、別にそんなことはないぞ。
タバサなら、万回乗せたってOKだ。
……いやそうじゃなくて。興味、あるのか?」
フリーズから瞬間的に立ち直ってまくし立てた才人が、素朴な疑問を尋ねてみた。
タバサはこくりと頷いて、
「あなたの世界の乗り物。
すごく、興味がある」
そうのたまった。
タバサの言葉の真意を探るべく、悩んで悩んで考え抜いたあげく結局答を出せなかった才人は、なんだか疲れた感覚とタバサを伴って庫くらの外に出た。
憔悴しょうすいした才人は改めて、視界を埋める広大な草原を眺め渡した。
しなやかな日差しに照らされ、風に揺らされきらきらと朝露を光らせる草原と、蒼くて白い空と雲の、鮮やかなコントラストが目に沁みる。
そういえば、こっちの世界に来てからというもの、とにかく毎日が好奇心で一杯で、こうやって景色を眺める余裕もなかったな、と才人は気付き苦笑した。
隣で佇むタバサの方も、輝く草原に目を向けたまま、身動きを忘れて見入っている。
才人の目には、そうした好奇に彩られるタバサの瞳が、きらきらと輝いていて映った。
そしてその目に魅入られた自分に気付いて、慌てて草原の方を見直す。
何故かオーバーワークをしたがる心臓や肺を押さえ込むよう努力しては、気付けば再び、輝く草原に見入っているタバサの瞳に釘付けになった自分がいる。
しばらくの間、そんなことを繰り返しながら各々、光景に見入っていると。
「お二方」
「ぅわぁ!?」
「ッ…(びくり)」
先ほどの老女に、背後を取られていた。
「? お二方、食事の準備が整いましてございます」
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