竜は異界の風を見せるか?
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途端に印ルーンが光を放ち、いつかの『破壊の杖』の時のように、その正体が何であるかを才人は正しく理解した。
「これは、武器?」
同じようにその“機体”の胴体に手を当てていたタバサが、光っている印ルーンを見ながら尋ねてきた。
この機体”が”武器か、と問われれば難しいけど、この機体”に”武器が詰まれているのは間違いない。
機首と両翼付け根の機関砲ガトリングポッド口や、機体下にずっしりと固定された二本の有翼誘導弾空対空ミサイルを見ながら、才人は頷いた。
声を出さなかったのは、その間にも印ルーンが光を放ち続け、持ち主サイトの記憶にこの“機体”の内部構造や基本的な操縦法を刻んでいたためである。
その情報の波が収束しだした頃になって、タバサは更に尋ねてきた。
「なにで造られているのか、よくわからない……。
やっぱり、これもあなたの世界の?」
「ああ」
それもおそらく間違いない。
これの持ち主は、墓石の記述を信用するなら『Japan Strategy Self Defence Force』――戦略自衛隊、の士官さんだ。
あの『破壊の杖』の持ち主と同じ、異世界からの闖入者ちんにゅうしゃ。
俺と同じ、異邦人。
「これは俺の世界の武器……、いや、『兵器』だ。
空を飛ぶ、な」
タバサにそう教えながら、刻まれた知識の中から燃料タンクの位置を探しあて、タンクコックを捻り開けてみた。
かすかに鼻を突く臭いはするものの、反響音が深い。
なるほど。
燃料ジェットねんりょうが空っぽじゃ、そりゃ飛べないわけだ。
タンクコックを戻し、少し機体との距離をとって、今度はその全身に目を向ける。
尖った機首から縦と横に突き出した尾翼までのラインにも、主翼にも、見た限りでは歪みはないようだ。
黒塗りされた全身の中で、垂直尾翼に抜きで描かれた『JSSDF』の銀文字と、継つぎ目を縁取りする淡い緑が目を奪う。
それを見る限りなるほど、この機体が『竜の羽衣』と呼ばれた理由がなんとなくわかった気がした。
才人がこの世に生まれるよりも、ずっと昔に生を受けた戦闘機。
今もなお現役で空を舞っている筈の生ける神話、その風格。
物言わぬ不死存在――即ち、『竜』の『羽衣から』、と。
「……確かF-15イーグル、だったっけ。
なんか改造されてるみたいだけど、燃料さえあればそのまま飛ばせそうだな。
ガソリンだったか、軽油だったか……? 重油は違ったような」
そうなるとこれの持ち主だった人は、相当な距離をこれに乗って飛んで
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