竜は異界の風を見せるか?
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…理由を教えてくださらないかしら?
でないと、納得のしようがありませんわ」
こんなガラクタなのに、とは内心に留めながらキュルケが問うた。
「はい。
……元々、この羽衣は義父の持ち物だったのです。
義父は60年ほど前、どこからともなくこの村を訪れたそうでして。
いつだか本人に訊いてみたら、遥か東の地ロバ・アル・カリイエの方からこの『羽衣』に乗ってこの草原にまで飛んできたと申しておりました」
それが本当なら凄い話だ、とギーシュは思う。
ここから東方の地までは、何千リーグキロメートル単位で離れているのだ。
「尤も、私とてこれが飛ぶ姿を見たことは一度もないのですが」
「それは、どうしてかね?」
ギーシュは、釣られたようだ。
「義父が言うには、……確か、ジャットゥネェリ……、いや、ジュトーネ・リュゥ……?
……とにかく、この秘宝に食べさせる餌が足りないそうです。
……話が逸れましたね。
ともかくそういう事情で飛ぶことの出来ない置物のようなものなのですが……、それでもこれは殆ど唯一といってもいい、義父の形見なのです。
出来るなら、お譲りしたくはありません」
「そこをなんとか、というわけには行かないかしら?」
形見と聞いてもなお食い下がるキュルケ。
どうも、無碍むげにダメと言われたことで、魂の何かに火がついてしまったようだ。
「……どうしても、これが必要なのですか?」
「ええ、その通りよ」
澱みなく答えたキュルケを、ギーシュが肘でつつく。
「……なあ、キュルケ」
「……言われなくたって、自分で分かってるわよ!
でも、ああやって拒否されると、どうしても欲しくなるじゃない!
分かるでしょ!?」
出来るなら、わからんよ、とギーシュは答えたかった。
だがその機会は、黙って考え込んでいた老女が先に話を切り出したことで、完全に流れてしまった。
「わかりました。ご足労お掛けしますが、私の後についてきてください」
「ここです」
「ここ……って、ただのお墓じゃないの」
もう少し羽衣を見ていたいと庫くらに残ったタバサを除く三人を引き連れた老女は、遠目に見えていた村の外れ、その共同墓地の一角で立ち止まった。
彼女の正面には、周りにある白くて幅広の墓石とは趣おもむきを異にする、黒くて四角い石柱で組まれた墓がある。
これが、老女の目的地だったようだ。
「これは義父が亡くなる前、その自らの手で組み上げた墓です。
……皆さま、そこに彫ら
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