竜は異界の風を見せるか?
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、ふらふらとその『ガラクタ』に向かって歩き出した。
才人はそれが何であるか、朧気ながらもシっていたから。
夢でも見ているような覚束無い足取りで歩み寄り、割れ物でも触るかのように恐る恐る指を、手をソレに触れさせ――
「こりゃあ!」
いきなり背後から飛んできた張りのある皴枯しわがれた怒鳴り声に、四人は弾かれたように20サントほど跳び上がった。
ぱっと後ろを振り返ると、そこには小柄で腰が少し曲がった老女が居た。
表情は逆光でロクに見えないが、まあ見るまでもないだろう。
どう考えても怒っている老婆は、こちらに近づきながら口を休めず畳み掛ける。
「そこで何をやっておるんじゃ 童わっぱども!
この庫ヤシロの内に入ってはならぬと、あれほど口を酸っぱ―――
―――うん?」
そのままギーシュとキュルケの目と鼻の先まで来た老女は、ようやっと目の前の年若い連中が知らない人間だと気付いた。
どうも近眼のようだ。
「誰じゃ、お主ら? この辺りでは見かけない顔じゃな」
「えーと……、その、俺た「トリステイン魔法学院の生徒よ」……」
どもった才人を遮ってキュルケがそう答えると、老女は先ほどまでの怒りがなかったことのように掻き消え、姿勢を流れるように正し、堂に入った仕草で両の手を胸の前で包むように重ね、頭こうべを垂れた。
「貴族の方とは露知らず、先ほどはとんだ失礼をば致しました」
「あら、お気になさらないで結構ですわ。
それより……、貴女あなた、『竜の羽衣』ってどこにあるかご存知かしら?」
老女は、意表を突かれたような表情で答える。
「『竜の羽衣』、ですか?
それでしたら、貴女様あなたさまの後ろにあるのがそれですが……」
何故このようなものを? と老女は不可解に思っているようだ。
四人はやはりこれが『羽衣』なのかと納得し、キュルケを除いた各々は『羽衣』へと視線を向けなおした。
「それじゃあ、この『ガラクタ』の所有者はどなた?
こんな寺院もどきを建ててるぐらいなんだから、誰かの持ち物なんでしょう?」
老女はキュルケの言い様に眉を顰めると、少し棘を含んだ語調イントネーションで言葉を紡いだ。
「……これは我が家に伝わる秘宝であります故に、一応は私の持ち物と言えなくもないでしょう。
しかし、それがどうか致しましたか」
「ええ、ちょっと要用いりようで。
できればこの秘宝、あたくしたちに譲ってい「ダメでございます」……」
老女は容赦なく話題を切り捨てた。
「…
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