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fate/vacant zero
竜は異界の風を見せるか?
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つめた。



「な、なに? あたしの顔に何かついてるの?」


 冷や汗を浮かべたキュルケが、タバサに尋ねた。

 タバサは目を逸らさずに首を傾げると、杖を軽く向けて一言。



「スキモノ?」



 ぐっさりざっくりと言葉の矢に不意討ちで急所をぶち抜かれたキュルケは、さめざめと幅涙を溢こぼしながらシルフィードの背中に突っ伏した。


 ……そこは黙っててやろうぜ、タバサ。











Fate/vacant Zero

第二十六章 竜は異界の風を見せるか?









「……なあ、キュルケ。マジでここなのか?」

「地図の上では、間違いなくここになってるわね」


 才人は呆ほうと大きく口を開けて、辺りをきょろきょろと眺め回していた。


 ここはラ・ロシェールの西方、タルブ領の4割方を占める大草原のど真ん中。

 学院近くにも大きな草原が広がっていたが、それとは違ってタルブの大草原は起伏に富んでいる。


 あっちがルイズやタバサならこっちはシエスタくらいかな、なんて意味もなく考える。

 どこからともなく殺気が飛んできた気がするが気にしたら負けだ。


 ともあれ。才人たちが今立っているのは、そんな丘の一つの上にぽつんと佇んでいる建物の前である。

 ちょうど草原は花盛りらしく、朝日に照らされている鮮やかな緑の上で、小さな白やレモン色がそこかしこで楽しげに踊っていた。


 建物を背にして眼下、遠目に見える森の手前辺りには、小さくわらわらと茶色っぽいものが見える。

 どうやら、あれが地図に描かれていた村らしい。


 左右の方角は今立っている所と似たような丘がちらほら見えるばかりで、かなり遠くまで何もない。

 鮮やかな色彩を誇っているそれらを気の済むまで見渡すと、才人は建物の方に振り返った。



「何やら珍しい形の建物だが……、これは寺院の一種かね?」

「見た感じ、そんな雰囲気ではあるけど……、何かしらね、この垂れ下がってる縄ロープ?」


 キュルケとギーシュは変わらずそこに立って建物を見ながら唸っており、タバサはその門扉もんぴに近付いて何やら調べているように見える。

 この建物は、一言で言って怪しかった。


 石材ではなく板と角材で組まれ、石灰と糊のりの混合物――いわゆる漆喰しっくいで塗り固められた白の外壁。


 ハの字に組まれた屋根の端から、何故だか大量に垂らされている細い縄。


 やはり木造で閂かんぬきの掛けられた、観音開きの大きな門扉もんぴ。


 門扉を取り囲むように組み上げられた丸い柱だけが
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