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fate/vacant zero
たからさがし
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のフレイルを、才人がデルフリンガーを片手で振るって絡め捕り、粉塵ふんじん爆発じみた『精製レフィネン』を唱えて煙けむに巻く。


 ……敵は残り17羽。

 いま唱えている魔法ならこの敵全てを呑みこめるのだが、サイトと火蜥蜴サラマンダーまで効果範囲に入ってしまっている(『戦乙女ワルキューレ』は巻き込んでも問題ないので数に加えない)。


 チャンスは、一瞬。

 サイトたちふたりを後ろに下げた、その一瞬だけが攻撃の好機となる。



 その“一瞬”を越えてしまえば、鴨鬼ダックの猛攻を身体このみで受けることになる。

 その上、敵後列が攻撃範囲から外れてしまうかもしれないのだ。


 逃すことは、できなかった。



 そうして隙を窺う間にも、双方の攻撃は止むことを知らない。


 才人は剣を振りぬいて距離を取り、『風刃エアカッター』を放って的確に首を削そぎ落とし。

 槍を手放した『戦乙女ワルキューレ』はフレイルによって砕かれるも、その破片の全てを即席の槍と化して、その身を砕いた愚か者を返り討ちにし。

 手放された『戦乙女ワルキューレ』の槍は、ハリネズミの様にその身を変えてさらに二体の鴨鬼ダックを屠ほふり。

 火蜥蜴フレイムは先ほど武器を才人に剥ぎ取られた一体に跳びかかり、その頭を顎あぎとで砕き。

 キュルケが隠れた木の上から放った炎の弾は、俊敏にかわそうとした鴨鬼を意思を持ったかの様に追い、骨まで尽ことごとく焦がしつくウェルダンした。



 これで、残りは11羽。


 時ここに至って、未だ生き残っていた鴨鬼ダックたちも、次々と為すすべなく屠られていく仲間を目の当たりにして、頭を冷やしたらしい。

 体勢を立て直すべく、大きく才人たちから距離を取った。



 されど、その選択は浅はかだった。


 ――もとい。

 その選択も・浅はかだった。





(今)


 そうタバサは確信し、手の中の短剣シェルを強く握り込んだ。



「坊主! 蜥蜴! デカいのが逝いくぞ!」


 それに応えたシェルンノスが鍔つばを震わせ警告し。



「よっしゃ! 決めてやれ、娘っこ!」


 才人が、フレイムが、それぞれタバサの視界から逃れ出て。


 周囲の水蒸気を白く纏わりつかせながら、タバサの杖は振るわれた。



 今回タバサが選択した呪文スペルは、今は仲間である短剣相手に不完全なまま試し、手酷く返り討ちに遭った四乗呪文スクウェアスペル。

 そう、『氷嵐アイスストーム』である。


 ただし、今回は以前のように不完全な魔力を不完全な詠唱で繋いだ、不完全な出来ではない。

 
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