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fate/vacant zero
たからさがし
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長い何かの茎のようなものを手にしている者が見えた。


 アレが、おそらくはこの群れのボスなのだろうが……。

 当初の作戦を続行するか、強攻策に切り替えるか。

 戦力の差と敵の種族を考慮しつつ、タバサは考えを纏めていく。





 彼らは、鴨鬼ダック。鴨鬼の戦士たちダック・ソルジャー。

 骨格や見た目は殆ど鳥そのものだが、れっきとした亜人の一種だ。

 金属類ヒカリモノを好み、好戦的で、組織的集団生活を営める程度の知能を持つという厄介な生態をもつ。

 この村はそんな鴨鬼ダックの群れに、運悪く目をつけられてしまったのだ。


 その結果、当時の住民たちは着の身着のまま、村の放棄を余儀なくされた。

 住処すみかを追い出された住民たちは、その足で領主に訴えでたのだが、当時の領主は相手に有利な森の中へ兵を出すことを良しとせず、その要請を放置した。

 一向に動かない領主に業を煮やした元住民は、なんとかして故郷へ帰ろうと、町に伝わる秘宝や鴨鬼ダックの隠し持つ貴金属類の噂を、尾ひれ背びれに胸びれやエラまでくっつけて近隣の町で流した。


 腕に覚えのある冒険者に、鴨鬼ダックの集団を追い払ってもらおうとしたわけだ。

 いまタバサらがこの村にいるのも、キュルケたちが手に入れてきた地図の中に、そのヒレの一部が紛れ込んでいたためなのだが――





<静まれぇッ!>


 突然、住処に上がった火の手に慌て取り乱した同輩ともがら全てに聞こえるよう、大きく声を張り上げる。

 火の手は気になるが、まずは気を落ち着かせることが重要だ。

 気を昂ぶらせていては、成功する任務も成功しなくなってしまう。


 なに、慌てることはない。

 幸い、本拠ホームからはまだ距離があるのだから。



<『整列』!>


 落ち着かせるためには、『いつものことだ』と認識を上塗りするのが手っ取り早い。

 よって、同輩ともがらがこれまでに何度も繰り返した普段の命令を与える。

 挙動不審だった同輩ともがらたちも、手馴れた素早さで普段の班と群れ、普段の様に隊列を組み、普段通りに私の前に居並んだ。


 所要時間、3秒半強。自分を含み、2小隊40名全員の整列完了。

 同輩ともがらたちの顔に焦りを伴った緊迫感は薄れ、今は落ち着いた適度な緊張感を湛えている。


 効果覿面こうかてきめんだったことを確認したうえで、目の前でいま起こっていることを整理する。


 火の気の類などどこにも見当たらないというのに、目と鼻の先では一本だけ木が燃え上がっている。

 あやしい。

 性懲りも無く、人間どもが攻め込んできたのだろうか。


 
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