たからさがし
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もん」
その指に嵌った水のルビーを所在なさげに撫でていたルイズは、そう負け惜しみの様にポツリと呟いた。
そう、些細なことなんかじゃなかったはずだ。
そのはずなのだ、と自分に言い聞かせながら、随分と久しぶりに自分の勉強机へと向かった。
その机の上には、最後にこの机を使った時と変わらず、『始祖の祈祷書』がある。
何の役にも立たない白紙のソレを儀礼的に開き、目を閉じた。
よりよい詔みことのりが浮かぶよう五感を無視し、精神を己の内へと収束する。
だが、その行動には一つの問題があった。
漠然と『よりよい詔みことのり』などという定義の仕方で、本当にそれを己の内から引っ張り出せるであろうか?
その答は、詩うたの女神によほど愛されていない限り、否であろう。
凡人が韻文を生み出そうとする際には、もっと明確な心の骨組みが必要なのである。
だがルイズは、『姫様アンリエッタのために、精一杯素敵な詔みことのりを考えなければならない・・・・・・・・・・』と、極めて漠然とし、かつ義務的なイメージを持ってこれに挑んでいた。
これでは韻文的な文章など思い浮かぶはずもない。
詞ことば造りには余裕も必要なのだ。
ゆえにルイズは当然の帰結として、15分ほどして目を開き集中を解いた。
無論、よりよい詔みことのりなど望むべくもない。
ルイズは溜め息を一つ吐くと、何気なく『祈祷書』に目を落とした。
そこにはなんらかの文章が、古代魔法語ルーンらしき文字で綴られていた。
「……えっ?」
長く瞑つむっていたことで若干ぼやけていた目を力強く擦り、もう一度『祈祷書』をまじまじと見つめた。
そこにはそれまで・・・・となんら変わること無く、ただ色褪せた羊皮紙があるだけだった。
「……疲れてるのかしらね。まさか、幻覚なんか見ることになるなんて」
それもこれも、みぃんなサイトのせいよね、と。
疲れたような呆れたようなよくわからない溜め息をこぼすルイズの姿だけが、そこにはあった。
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