たからさがし
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驚いた。
続けて、寝巻きのままであったことを思い出し、慌ててガウンを羽織るとベッドから下りる。
「体の具合はどうじゃね?」
心配そうな声色で訊ねられたルイズは、気まずそうに声の主――老オスマンに正対した。
「……ご心配おかけして申し訳ありません、老オールドオスマン。
別段、たいしたことはありません。
ちょっと、気分が優れないだけです……」
老オスマンはそれに安心したように顎鬚をひとなですると、椅子を引き出して腰掛けた。
「きみが随分と長く休んでいると、耳にしたものでな。
ちと心配になったが……、うむ、顔色は悪くないようで何よりじゃな」
ええ、と相槌を入れたルイズも、対面の椅子を引き出し腰掛けた。
「詔みことのりはできたかの?」
何気なく放たれたその質問に、ルイズははっとさせられた。
今の今、老オスマンがそれを口にするまで、詔みことのりのことなど宙に消えていたのだ。
「その顔を見ると、まだのようじゃな」
叱られているかのように、ルイズは面おもてをしゅんと伏せた。
「申し訳、ありません……」
「なに、式はまだ二週間も先の話じゃ。
ゆっくり考えるがよかろ。
何分、そなたの大事な、ともだちの式なのじゃから。
念入りに言葉を選び、祝福してさしあげなさい」
ルイズは頷き、そして自分が自分のことばかりを考えていたことを恥じた。
姫様が自分との友情を大切に思って、巫女の大役を与えてくださったのに、それを忘れてしまうとは何事か……、と。
ルイズの表情が引き締まったのを見てとった老オスマンは、一頷きすると椅子から立ち上がった。
そうしてドアまで歩いていき、ノブに手を掛けたところで、思い出したように声をかけてきた。
「のう、ミス・ヴァリエール」
「はい?」
「使い魔の少年とは、何かあったのかね?」
ルイズは長い睫毛を伏せると、そのまま黙り込んでしまった。
ふふぉ、と老オスマンは微笑みを浮かべ、顎鬚を撫でる。
「のう、ミス。若い時分は、ほんの些細なことでもケンカになるものじゃ。
若者が妥協することは、星空を足元に見るくらいに困難なことじゃからのぅ。
そうしてケンカを繰り返しながら、自ずと他人との距離を学んでいくものじゃが……。
時としてその皹ヒビは、修復がなされないままに亀裂と化すこともある。
そうならぬよう、充分じゅうにぶんに気を使うことじゃな」
ふぉっふぉっふぉ、と一笑いして部屋を立ち去る老オスマン。
「……些細なことなんかじゃ、ない
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