暁 〜小説投稿サイト〜
fate/vacant zero
たからさがし
[15/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
驚いた。

 続けて、寝巻きのままであったことを思い出し、慌ててガウンを羽織るとベッドから下りる。



「体の具合はどうじゃね?」


 心配そうな声色で訊ねられたルイズは、気まずそうに声の主――老オスマンに正対した。



「……ご心配おかけして申し訳ありません、老オールドオスマン。

 別段、たいしたことはありません。
 ちょっと、気分が優れないだけです……」


 老オスマンはそれに安心したように顎鬚をひとなですると、椅子を引き出して腰掛けた。



「きみが随分と長く休んでいると、耳にしたものでな。
 ちと心配になったが……、うむ、顔色は悪くないようで何よりじゃな」


 ええ、と相槌を入れたルイズも、対面の椅子を引き出し腰掛けた。



「詔みことのりはできたかの?」


 何気なく放たれたその質問に、ルイズははっとさせられた。

 今の今、老オスマンがそれを口にするまで、詔みことのりのことなど宙に消えていたのだ。



「その顔を見ると、まだのようじゃな」


 叱られているかのように、ルイズは面おもてをしゅんと伏せた。



「申し訳、ありません……」

「なに、式はまだ二週間も先の話じゃ。
 ゆっくり考えるがよかろ。
 何分、そなたの大事な、ともだちの式なのじゃから。
 念入りに言葉を選び、祝福してさしあげなさい」


 ルイズは頷き、そして自分が自分のことばかりを考えていたことを恥じた。

 姫様が自分との友情を大切に思って、巫女の大役を与えてくださったのに、それを忘れてしまうとは何事か……、と。



 ルイズの表情が引き締まったのを見てとった老オスマンは、一頷きすると椅子から立ち上がった。

 そうしてドアまで歩いていき、ノブに手を掛けたところで、思い出したように声をかけてきた。



「のう、ミス・ヴァリエール」

「はい?」


「使い魔の少年とは、何かあったのかね?」


 ルイズは長い睫毛を伏せると、そのまま黙り込んでしまった。

 ふふぉ、と老オスマンは微笑みを浮かべ、顎鬚を撫でる。



「のう、ミス。若い時分は、ほんの些細なことでもケンカになるものじゃ。
 若者が妥協することは、星空を足元に見るくらいに困難なことじゃからのぅ。
 そうしてケンカを繰り返しながら、自ずと他人との距離を学んでいくものじゃが……。

 時としてその皹ヒビは、修復がなされないままに亀裂と化すこともある。
 そうならぬよう、充分じゅうにぶんに気を使うことじゃな」


 ふぉっふぉっふぉ、と一笑いして部屋を立ち去る老オスマン。



「……些細なことなんかじゃ、ない
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ