軋んだ想い
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の技術とは異なる、新たな技術を知っている。
きみも"ともだち"になるといい、艤装主任」
そうですか、と適当に頷く。
この男に向ける礼など持ち合わせてはいない。
「『ロイヤル・ソヴリン』号に敵う艦は、ハルケギニアのどこにも存在しなくなりますな」
「ミスタ・ボーウッド。アルビオンにはもう、『王権ロイヤル・ソヴリン』は存在しないよ?」
苦笑しながら簒奪者クロムウェルがそう言ったことで、自分が何を口走っていたかに気付いた。
どうやら、自分の中ではこの国は未だ、王国であるらしい。
「……そうでしたな。
しかしながら、たかだか結婚式の出席のために新型の大砲を積んでいくなど、下品な示威行為と取られますぞ」
話題をそらす。
約半月後に控えたトリステイン王女とゲルマニア皇帝の結婚式に、初代神聖皇帝兼貴族議会議長の簒奪者クロムウェルや、議会の閣僚たちは国賓として出席する。
その際に連中が乗艦するのが、この『ロイヤル・ソヴリン』号――内心だけでも言い張ってやる――なのだ。腹立たしいことに。
だいたい親善訪問に新型の武装を積んでいくなど、この男の品性はどこまで腐っているのか。
「ああ、そうか。きみには、親善訪問の『概要』を説明していなかったな」
この男が言う概要とは、陰謀の概要を指す。
時ここに至るまでに何度もその『概要』を聞かされていた自分は、それをよく理解していた。
「また、何かあるので?」
「ああ。耳を貸すといい」
簒奪者は自分の耳に口を寄せると、一言、二言。
――とんでもないことを呟いてくれた。
その呟きを理解した時、耳を疑い、次に自分の意識を疑い、さらに現うつつを疑った上で、最後にこの男の正気を疑った。
「――バカな。そのような破廉恥な行為、見たことも聞いたこともありませぬぞ」
「見たことも聞いたこともないからこそ、奇襲というものは成立するのだ。軍事行動の一環だよ」
顔色も変えずにしれっとそう答えた簒奪者に、脳裏のどこかで、これまで堪えていたものが音を立てて千切れた。
「トリステインとは、不可侵条約を結んだばかりではありませんか!
このアルビオンの長い歴史の中に、他国との条約を破り捨てた過去はない!」
「ミスタ・ボーウッド、それ以上の政治批判は許さぬ」
簒奪者の声が、唐突に氷点下まで冷めた。
「これは議会が決定し、余が承認した決定事項だ。
君は余と議会の決断に逆らうつもりかな? いつから君は政治家になった」
……確かに、自分は軍人だ。
物
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