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fate/vacant zero
軋んだ想い
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あいつは、わたしの――」


 ルイズは、激昂したまま叫びを上げようとして、途中で声を詰まらせた。



「……わたしの……」


 顔を俯かせ、止まっていた涙をまたぽろぽろと溢しはじめるルイズ。

 思わず溜め息が漏れてしまったけど、これぐらいは許されてしかるべきだと思う。



「あなたが意地っ張りで、嫉妬深くて、高慢ちきなのは知ってたけど……、ここまで寛容さが足りないとは思わなかったわ。
 仲良く食事するくらい、許してあげなさいよ」


「それだけじゃ、ないもん。よりにもよって、わたしのベッドで……」



 え。



「抱き合ってたの?」


 こくりと、ルイズが頷いた。


 ……あらま。

 ご飯を持ってきた子を押し倒すなんて、サイトもやるわね。

 でも、なんだかサイトらしくないのはなんでかしら?



 ……後で訊いてみましょうか。

 とりあえずはルイズの誘導が先だけど。



「まあ、好きな男が他の女と自分のベッドの上で抱き合ってたら、ショックよねー」

「好きなんかじゃないわ! あんなの!
 ただ、貴族のベッドを――」

「御託や言い訳はいらないの。

 だいたい、貴族だ平民だー、でそんなに泣いてるだなんて、信じられると本気で思ってる?」


 もし本気ならさっきの悪口の中に"真正のおバカ"を追加しなくちゃいけないんだけど。



「――ぅ」


 意地だと自覚はあったのか、ルイズは口を噤つぐんでしまった。

 なんか大きな涙滴型の汗が見えた気がするのは……錯覚にしておきたいわね。



「好きじゃなかったら、追い出すほど怒ったりしないでしょ。
 ルイズ。あなた、サイトに何かアプローチはした?」


 返事は、顔を俯かせることでなされた。

 また溜め息が口から漏れた。雰囲気のせい、ということにしときましょうか。



「あなたってヘンな子ね、ルイズ。
 好きなそぶりも見せてあげない男のことで、一人で泣いたり怒ったり。
 そりゃ、他の子といちゃつきたくもなるってものよ?」


 女の涙は武器だけど、見せない涙はただの敗北宣言なのよ?


 ……あ、その意味だと武器になっちゃったのかしら。

 あたしに効かせてどうすんのよ、って言いたいけど。


 軽い頭痛を堪えながら、ベッドに降ろした腰を上げる。



「サイトは、あたしがなんとかしてあげる。
 あなたはその間に、頭を冷やしておきなさい。

 殴られたり、蹴られたり、追い出されたり……、今までどおりじゃ、サイトがなんだか可哀想だわ。
 彼は、あなたの奴隷じゃないのよ?」


 
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