軋んだ想い
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り(脳内補完)してきた。
……生殺しってレベルじゃねえぞ。
だもんで真夜中、タバサが寝言で「父さま、母さま」と呟き、涙の雫を溢しながら抱きしめてきた時。
その安らかな顔を見るまで、自制の糸が張り詰めすぎてて眠れやしなかった。
……聞くのも野暮かと思って訊ねてないんだが、タバサの家庭の事情ってどうなってんだろうな。
そういえばフーケのゴーレムと戦う前ぐらいの頃、タバサが変な時間に学院から居なくなってたことがあった気がするんだけど。
あれって、実家に帰省してたんだろうか?
なんて考えていたら、かつかつと窓が叩かれる音がした。
ああ、やってきやがったか最大のサプライズ。
「きゅいきゅい」
窓の外。
ばさばさと滞空するシルフィードが、四本の爪を器用に使って窓を外へと開いていく。
窓の鍵は掛けていない。
以前に一度、鍵を掛けて眠って朝起きたら、シルフィードの首が窓からにょっきり生えていたことがあったらしい。
閉まったままの窓を、周りの壁ごと扉まで吹っ飛ばして。
朝っぱらから苦手な『土』の魔法で修理をするハメになって、それ以来カギは掛けないことにしたんだとか。
そんなお間抜けな風竜、シルフィードは、今日も元気に開いた窓から首を突っ込んで、
「きゅいきゅい、おねーさま、おにーさま! おはようなのね!」
人の言葉で挨拶してきた。
初日は驚いたものの、三日目にもなればもう慣れたもんだ。
「おう、おはようシルフィ」
「……おはよう」
いつものようにそう返す。
いや、いつもって言うほどは日が経ってないけど。
ていうか俺、初日の朝にいきなり喋られた時もそれほど驚かなかったしな。
『おお、竜って喋るんだな』って普通に流した覚えがある。
好奇心は動かされたけど。
……なんか俺、こっちに来てから感覚が麻痺してんのかね?
なんでもシルフィードは、風竜の中でも珍しい"知恵のドラゴン"とやらの『眷属』である風韻竜だそうで、会話は常識、魔法も軽々使いこなすんだそうな。
ちなみに齢は200ぐらい、吐息ブレスは冷気を帯びているらしい。
ファンタジーここに極まれりだな。
あと、なんで俺の呼び名がお兄さまなのかというと。
「お姉さまのツガイなんでしょ? だったらお兄さまなのね! きゅい!」
だそうだ。
ツガイっておま、とか。
そもそも俺とタバサはまだそんな関係じゃねえぞ、とか。
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