軋んだ想い
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」
そうなのか? と視線に込めてギーシュを振り返れば、肩をすくめて両掌を上に向けていた。
いや、どっちなんだそれ。
「まあ、確かにそうだけどさ。
ヘタな"銃"も数撃ったらあたるじゃない?
試すに越したことはないわよ。
正攻法の士爵位シュヴァリエ授与なんて、いまのトリステインじゃ絶望的なんだから」
「……」
顎に手を当て、何やら考え込むタバサ。
キュルケがその耳元になにごとかを囁くと、タバサはキュルケと視線を交わし、俺の視線を眉尻の落ちた瞳で真っ直ぐ包んだ後、いつものように短く一言。
「わかった」
頷きと合わせて、そう呟いた。
……なんか、タバサが寂しげなんだが。
「おい、キュルケ」
いったい何を吹き込んだんだ、と訝いぶかしんでキュルケを見れば、タバサを軽く見開いた目で見つめている。
「……キュルケ?」
どうみても驚いていたキュルケは、ゆっくりと俺の方を振り向いた。
……表情を変えろといいたい。
目ぇ見開いたままこっち見んなよ、怖ぇぞ。
一秒。
二秒。
三秒待って、正視するのに限界が来て目を逸らした。
その途端、がっしと両肩を掴まれた。
いやまて、いまどうやって距離を詰め――
「ねえ、サイト」
「ひ、ひゃい?」
(抑揚の失踪した)温かい声で名前を呼んだキュルケが、手で口許を隠しながらゆっくり顔を近づけてくる。
び、びびってない、びびってなんかないぞ。
「貴族になれたらきちんとした手順を踏んで、タバサにプロポーズなさいね。
泣かせちゃったりしたら――炭も遺さないから」
ぼそぼそと耳元で囁かれた。
だからさらっと怖いこと言うなって。
心配しなくても、タバサの泣き顔なんて俺だって見たくねえや。
「そう、じゃあ大事にしてね。あたしの大切な親友なんだから」
当たり前だ。
ちゃんと大事に…………ぁん?
「ちょちょちょちょ、ちょっと待った!」
「だーめ。頑張ってね、ダ・ァ・リ・ン?」
問答無用ですかいやほんと待ってくれ。
ぷろぽーずって何のことかとよく考えたら考えるまでもなく求婚じゃねえかなんで俺がこの年でそんな真似。
「いいから、いいから。それとも、サイトってばタバサの哀しむ顔が好みだったりするのかしら?」
ふざけろ、そんなわけあるか。
んな鬼畜が居たら、俺がデルフの錆さびにしてるぞ。
もう錆さびなんて残ってないけど。
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