軋んだ想い
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ってるなんて……やるじゃない、ダーリン」
二人のやりとりを眺めながら、感心したような呆れたような顔のキュルケは溜め息を漏らした。
「だが、たかが『精製レフィネン』でこんなありさまとは、先が思いやられるね」
手に抱えていた紙切れを脇に置いたギーシュは、心底不思議そうに才人に尋ねた。
「んなこと、俺に訊くな。そう言うんならギーシュ、ちょっとやって見せろよ」
「なんで偉そうなんだねきみは。まあいいさ、ほら――Constituere集え」
と。
ギーシュが何気なく振った杖の先、積もっている砂の一部がもこもこと盛り上がり、いつもより小さな砂の彫像――『戦乙女ワルキューレ』がそこに現れた。
……一呪ひとことかよ。ほんとにドットか、おまえ。
「生憎とドットなのさ。先は長いぞ、頑張りたまえよ駆け出しくん」
はっはっは、と背中を叩きまくりながら笑うギーシュが、なんだか腹が立ってしかたないんだが。
「おまえら、いったい何しに来たんだよ?」
ぴたっとギーシュの動きは止まり、キュルケの表情が真剣なものに変わる。
「ねえ、サイト」
いつもと違い、俺の名前を呼ぶキュルケ。
差し出された右手が、頬をするりと撫であげていく。
「な、なんだよ?」
「あなた、ルイズを見返してやりたい、って思ったことはない?」
ある。
その質問が耳に届いた途端、脊椎がそう答えを返してきた。
勝手にこっちの世界に引き込んで、勝手に一人で突っ走って、勝手に人を追い出しやがって。
人が助けてやった恩も忘れて、たかがベッドに乗っかってただけで、言い分も言わせずに放り出されたわけだ。
これで、見返してやろうと思わない方がおかしい。
んだが。
「あのやろ、俺が平民だってだけで怒りやがるんだぜ?
どうやって見返しゃいいんだよ」
一瞬だけ眉をひそめたキュルケだったが、すぐに不敵な笑みを浮かべなおして、さも簡単そうにこうのたまった。
「あら、単純なことよ。サイト、あなた貴族になってみない?」
「……へ?」
はて、いまキュルケはなんと言った。
貴族になってみないかって?
……貴族って、そんな簡単になれるもんなのか? と、いつの間にやら本を読み始めていたタバサに訊ねてみる。
「平民が貴族になるには、領地の購入、公職への就任、士爵位シュヴァリエの授与、のいずれかが必要」
ふんふん……って、どれもこれも、俺らの年齢じゃ手が届きそうにねえな。
いや、タバサが
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