軋んだ想い
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ギーシュが綺麗に石化した。
ぎぎぎ、と足を止めたまま首を振り向ける。
「……な、何故それを?」
「一昨日だか、モンモランシーがぼやいてたわよ?
あなたの浮気癖を治す効率的な方法は何か無いかしらって、魔法薬のレシピとにらめっこしながら」
「うう……、参ったなぁ」
ギーシュは、がくりと肩を落として嘆息する。
「ぼくが愛しているのは、モンモランシーだけなのに……ああモンモランシー、きみはぼくのなにがいけないと言うんだ」
あら、とキュルケは首を傾げる。
「あの一年生はいいの?」
「ケティかい? ……あの後、謝ってからは会ってもくれなくてね。
ケティとは手を握っただけ、モンモランシーにだって軽くキスぐらいしか出来てないというのに、酷い話だよ」
キュルケは、情熱仲間だとばかり思っていたギーシュが意外と奥手だったらしいことに驚き、かつその段階で激発したモンモランシーに、軽く眩暈めまいを覚えた。
……トリステインの女ってば、どうしてこう揃いも揃って嫉妬深いのよ。
それぐらいのことに目くじら立てなきゃいけないほど、自分に自信がないの?
と。
「いっそ、直接訊ねてみたら面白いかもね」
なにを?と首を傾げるギーシュはスルーする。
話している間に到着したタバサの部屋のドアを、キュルケは遠慮なく躊躇なくノックもなく声すらかけずに開いた。
その一拍後、声ぐらい掛ければよかったかと、どっさり砂をかぶりながら少し後悔した。
少しだけ時を戻して、タバサの部屋。
「なあ、タバサ。本当にこれ、貰っちまっていいのか」
小枝かと見紛うほど短く細い、先端に翼をあしらわれた杖を眼前にかざして、才人はそう尋ねた。
「かまわない」
先ほどその杖を手渡してきたタバサは椅子に座りなおし、いつもと変わらない様子でそう答えた。
「そ、そうは言うけど……、タバサの、ちっちゃい頃の杖だろ?
思い出とか、あるんじゃないのか?」
「いい。今のわたしには、これがあるから」
いつもの大きな樫の杖を軽く掲げて言うタバサは、使われずに倉庫くらに死蔵されるよりは、使いたい人に使われた方が杖も嬉しい、と重ねて主張する。
「……そっか。そうだな。なら、大事に使わせてもらうよ。ありがとな、タバサ」
頷いたタバサも、心なしか嬉しそうだ。
ここしばらく一緒に過ごしてみて分かったことだが、タバサの表情は大きく動かないだけで、よく見てみると結構わかりやすい。
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