軋んだ想い
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言わぬ剣で、誇りしか持てない番犬だ。
政府の、上位指揮系統の決定である以上、黙って従うべきなのだ。
だが。それでも確かに、誇りはあるのだ。
自分の――いや、国家そのもののそれが踏み躙られようとしている今、それを指摘することもなくただ従うことなど、出来ようはずがない。
「……アルビオンは、ハルケギニア中に恥を晒す事になります。
卑劣なる道理知らずの国として、悪名を轟かす事になりますぞ」
「悪名?
ハルケギニアは我々聖邦復興同盟レコン・キスタの旗の下、一つにまとまるのだ。
聖地を森人エルフどもより取り返した暁には、そんな些細な外交上の経緯いきさつなど、誰も気にとめまいよ」
――沸騰した。
「条約破りが、些細なことですと? あなたは祖国をも裏切るつもりか!」
そう怒鳴りつけ、胸倉を掴もうと手を伸ばして。
「――殿、下?」
クロムウェルの隣に控え、杖を突き出した男の、フードから覗いた見覚えのある顔に、全ての動きを凍りつかされた。
バカな、と。
「艦長。かつての上司にも、同じ台詞が吐けるかな?」
気付いた時には、その場に膝をつき、貴族としての王族に対する礼を取っていた。
ゆらりと差し出された昔と変わらない司令の手に、接吻して。
氷の精霊フラウに触れられたかと錯覚するほど、全身が強烈な寒気に襲われた。
目の前を、共の者たちを促したクロムウェルが、その後を従順に続く皇太子が、ミス・シェフィールドが歩み去っていく。
それらを呆然と見やりながら、抜け切らない寒気に体を震わせた。
あの戦いで、ウェールズ司令は死んだのではなかったのか。
先ほど触れた司令の体温は、紛れもなく死人のそれだった。
だが、今、目の前で、紛れもなく司令は生きて、動いている。
死人を蘇らせる魔法など、『水』のトライアングルの自分でも聞いたことがない。
では、あれは人形ゴーレムなのか?
……いや、それはない。
あの司令の体内では、確かに血が、水が、生気を伴って流れていた。
人形ゴーレムでは無いと、それだけは断言してもいい。
ならばあれは。
もしや、あの噂は。
神聖皇帝クロムウェルは、『虚無』を操るという噂は真実なのか。
今、死んでいるはずの司令を確かに生かしている魔法は、始祖が使ったという伝説の『零』の系統なのか?
「……あいつは、この世界ハルケギニアをどうしようと言うのだ」
唇から伝播した
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