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fate/vacant zero
複雑明快な連逢事情
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っか。そりゃ楽しみだよ」


 あのサラダを食い始めてから、そっち系の味がかなり好きになってきたから。



「うふふ、いまお注つぎしますね」


 お皿を全て並べ終えたシエスタは、そう笑ってティーポットを手に取った。



「あ、飲み物なんだ?」


 こぽこぽと、よく透き通った若葉色の液体がカップへと注がれていく。



「ええ。大陸ハルケギニアの飲み物より、後味がスッキリしてるんです」


 シエスタはそう説明しながら、なみなみと明るい色のドリンクが湛えられたカップを差し出してきた。



「ありがとう」


 簡単に礼をして、カップを口元に運んでみる。

 緑の香りが、緩く届く。


 どういう飲み物なんだろう?

 期待を胸に、くいっと口に流し込んだ。



「――え?」



 軽い渋みと苦みを含んだ、覚えのある甘い味。


 それが舌を擦り抜けていった。

 身動きを忘れ、辿るまでもなかったほど慣れ親しんだ味の記憶を辿る。



「ど、どうなさいました?」


 固まった俺に、心配そうな声でシエスタが訊ねてきた。



「シエスタ」

「は、はい」


「もう一杯」





 少し怪訝な面持ちになったシエスタが淹れてくれたソレ・・を今度はじっくり味わう。


 少量を口に含み、舌の上で転がし、鼻に香りを通して――、確信できた。

 やっぱりこの味には、間違えようもないほど覚えがあった。

 どこで、なんてもう考えるまでもない。


 これは、日本おれのせかいで。

 昔からずっと、毎日一杯は飲んでいた。


 『緑茶』だ。


 味に引き出されたのか、脳裏には通称"思い出"と呼ばれるものが出現していた。



 ――それはよくある、食後の一コマ。


 ――よく笑い、よく笑わせてくれた、なんというか漢らしさに溢れた父さんが。


 ――口やかましく小言を言う、でもよく微笑んでいた気がする淑女な母さんが。


 ――繋がりは浅くても、何の違和感もなくそんな日常を謳歌していた頃の俺が。


 ――食後の食卓でテレビを見ながら、母さんの淹れた暖かな緑茶を飲み干している光景。



 もう味わえなくなったはずの渋みのある甘さは、塞き止めようのないほどの懐かしさを生み出して。



「サイトさん! だいじょうぶですか!」

「え……」


 気付いた時には頬を涙が伝い、身を乗り出して真剣な顔になったシエスタに、顔を覗きこまれていた。



「え、あ、いや。その、ちょっと懐かしかっただけだから。平
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