複雑明快な連逢事情
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だろ、俺。
……とりあえず、目の前のシエスタからだな。
「えっと、ありがとう。
でも、最近は食糧事情が改善されて、それほど腹がすかなくなったんだよ。
ルイズが、席で食べていいって言ったから」
「そう、だったんですか?
わたし、先週から先生方の食卓の給仕に回ってましたから、気付きませんでした……。
じゃあ、余計なお世話だったのかしら……」
しゅん、とシエスタが項垂れてしまった。
いかん、これは良心にクるものがある。
「……そ、そんなことないって! 持ってきてくれたの、凄く嬉しいよ!」
「ほんとですか?」
数十分前に食堂で腹いっぱいに詰め込んだばかりだったりするけど、親切を無駄にするのは、なんかこう俺の魂的なモノに反する。
というか、こう微妙に潤んだ瞳で見つめられて拒否できるヤツがいたらきっとそいつは人間じゃない。
「勿論!
……えと、その、ちょうど小腹もすいてきてたし!」
いや小腹じゃダメじゃんバカ俺。
そう焦っていると、クスリとシエスタは笑いを溢した。
なんか苦笑の類な気がしなくもないけど、それはいいや。
とにかくシエスタはそう、微笑ほほえんで。
「それじゃあ、お腹いっぱい食べてくださいな」
戦いの鉦ゴングを打ち鳴らした。
小さな円卓まるてーぶるの上、所狭しと料理の類が並べられていく。
シエスタがニコニコとそれらを並べていくのを見ながら、肋骨のちょっと下辺りを撫でる。
……胃はまだ重い。
満腹中枢はサボるつもりは無いらしく、視覚情報から取り入れた食物の群れに対して盛んにアラート信号を発散している。
そう、このままこれ等に手をつけては、文字通りの必死に至ると。
そう言われても、この満面の笑みに逆らう術など、俺の持ち合わせの作戦には存在しないわけで。
先ほどしこたま腹に詰め込んだ自分が、いまは心底恨めしかった。
「あ、そうだ。先週、ちょっと珍しい品が手に入ったんですよ。おご馳走、です」
「ご馳走?」
しかも珍しい。
ああ、その二言だけでなんか空腹中枢が自発的に超過労働しはじめた気がする。
好奇心は偉大だ。
「そうです。東方ロバ・アル・カリイエから運ばれた珍しい品だそうで。
『Чайツャイ』って言うんですよ」
「『チャイ』?」
なんかどっかで聞いたことがあったようななかったような。
「ええ、『Чайツャイ』です。
ちょっと苦いですけど、慣れれば美味しいですよ」
「そ
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