複雑明快な連逢事情
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なバカの。
あんなバカの。
勝てないと分かっているハズの相手に、自分から喧嘩売るようなバカの。
あんな、バカの。
ウェールズ皇太子の御前で誓いを立てるなんて、バカでもやらないバカをやってくれたバカの。
あんな――、
「……あのね、ルイズ。あなたって誤魔化そうとするとき、耳たぶが震えるの。知ってた?」
ぱっ、と両手で両耳たぶを挟み込んだ。
キュルケの顔に浮かんだ苦笑に気付いて、さっと手を膝の上に戻した。
嵌められた。今日は調子が悪すぎる。
「と、とにかく、サイトはわたしの使い魔なんだから。
あんたなんかに、あげないんだからね」
精一杯の虚勢を張り、成長途上の胸を反らし、指を天に向けて宣言する。
キュルケの苦笑がよりくっきりしたものに変わった気がするのは何故だろう。
「独占欲が強いのはいいけれど、あなたが今心配するべきなのは、あたしじゃなくってよ?」
「……どういう意味よ?」
「ほら……、なんだっけ。あの、厨房のメイド」
にゃんですと?
「あら。心当たりがあるの?」
「べ、ベつに……」
「今、部屋に行ったら面白いものが見られるかもよ?」
部屋。
すっくと立ち上がり、ターン90度。
心持ち前傾し、力強く一歩を――
「好きなんかじゃないんじゃなかったの?」
「編み棒部屋に忘れたから取りに行くのよ!」
弾けさせた。
「編み棒ならここの――」
続くキュルケの台詞は風に防がれ、聞こえない。
そのまま部屋に向かって、全力疾走を開始した。
「――セーターに刺さってるじゃない、って行っちゃった……ヘタな言い訳ねぇ。
ま、とりあえずはコレであのメイドのことは片付いたわね」
さて、どっちを応援しようかしら?
そんな興味津々の呟きも、走り去るルイズの遠い背中に届くことはなかった。
才人は、部屋の掃除をしていた。
最近ルイズが洗濯や身の回りの世話を自分でするようになったので、仕事がコレぐらいしかなくなったのである。
ちなみに部屋の掃除の方法は、才人のいた世界となんら変わり映えするところは無い。
箒で床を掃き、濡らした雑巾で床を磨く。それだけである。
才人にとっては、小学校ぐらいから高校に至るまで延々反復して、すっかり手慣れてしまったことだった。
今まで掃除してきたどの教室よりもこの部屋は狭かったし、机なんかを移動させる必要も
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