複雑明快な連逢事情
[4/18]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ニャんかにゃイわ?」
声も台詞も激しく噛んで詰まって裏返った。
挙動不審にも程がある。
落ち着きなさい、わたし。
「編んでた。だってほら、本の下から編み棒が覗いてるわよ」
そう言ってキュルケは、すっとその棒ごと編み物を引っこ抜いた。
ってちょっと!
「か、返しなさいよ!」
ばたばたと手を振ってソレを取り返そうともがいてみたけど、額を片手で抑えられて届かない。
こんな時、一向に育たぬ我が身が恨めしい。
「………………」
で、なんでキュルケは黙ってるんだろう。
笑いなさいよ。
ええ笑いなさいよ。
むしろ嘲わらいなさいよ、いつもみたいに。
あの物体を見て沈黙されるのって、笑われるよりずっとダメージ入っちゃうから。
「……ねえルイズ? こ、これ、何?」
心底からの疑問の声がした。心が痛い。
「セ、セーターよ」
「セーター? 新種のヒトデのぬいぐるみじゃなくて?」
「そんなの編んで何にするのよ!?」
その『やれやれ』って言い出しそうな仕草やめて。
すっごい虚しくなるから。
まあその仕草のお蔭で、半端に宙に向けられた手からセーター(?)を取り戻すことが出来たけど。
ああ恥ずかしい。
「あなた、セーターなんか編んでどうするつもり?」
「そんなの、あんたに関係ないじゃない」
「つれないわね。
でも、いいのよルイズ。あたしはわかってるもの」
キュルケが肩に手を回して、顔を近づけてきた。
なんだか包容力のある笑顔で。
当てられるもんなら当ててみなさいよ。
「使い魔さんに何か編んでるんでしょう?」
正解、的中、図星、満点、わたしが悪うございました。
でも反論はする。
恥ずかしいじゃないの。
「ああああ編んでなゃいわよ!」
噛んだ。
ああ、さらに恥ずかしい。
恥の上塗り。
「あなたってほんとにわかりやすいわね。好きになっちゃったの? どうして?」
キュルケがわたしの目を覗き込みながら、そう尋ねてきた。
好きになる?
誰が? わたしが?
誰を? あの犬を?
ありえない。
「す、好きなんかじゃないわ。
好きなのはあんたでしょ? あんなバカの、どこがいいのかしんないけど」
そう、本当に、あんなバカのどこがいいっていうんだろう。
自分のプライドのために、死ぬ一歩手前まで意地を張るよう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ