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fate/vacant zero
複雑明快な連逢事情
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ニャんかにゃイわ?」


 声も台詞も激しく噛んで詰まって裏返った。

 挙動不審にも程がある。


 落ち着きなさい、わたし。



「編んでた。だってほら、本の下から編み棒が覗いてるわよ」


 そう言ってキュルケは、すっとその棒ごと編み物を引っこ抜いた。

 ってちょっと!



「か、返しなさいよ!」


 ばたばたと手を振ってソレを取り返そうともがいてみたけど、額を片手で抑えられて届かない。

 こんな時、一向に育たぬ我が身が恨めしい。



「………………」


 で、なんでキュルケは黙ってるんだろう。


 笑いなさいよ。

 ええ笑いなさいよ。

 むしろ嘲わらいなさいよ、いつもみたいに。


 あの物体を見て沈黙されるのって、笑われるよりずっとダメージ入っちゃうから。



「……ねえルイズ? こ、これ、何?」


 心底からの疑問の声がした。心が痛い。



「セ、セーターよ」

「セーター? 新種のヒトデのぬいぐるみじゃなくて?」

「そんなの編んで何にするのよ!?」


 その『やれやれ』って言い出しそうな仕草やめて。

 すっごい虚しくなるから。

 まあその仕草のお蔭で、半端に宙に向けられた手からセーター(?)を取り戻すことが出来たけど。


 ああ恥ずかしい。



「あなた、セーターなんか編んでどうするつもり?」

「そんなの、あんたに関係ないじゃない」

「つれないわね。

 でも、いいのよルイズ。あたしはわかってるもの」


 キュルケが肩に手を回して、顔を近づけてきた。

 なんだか包容力のある笑顔で。


 当てられるもんなら当ててみなさいよ。



「使い魔さんに何か編んでるんでしょう?」


 正解、的中、図星、満点、わたしが悪うございました。

 でも反論はする。


 恥ずかしいじゃないの。



「ああああ編んでなゃいわよ!」


 噛んだ。

 ああ、さらに恥ずかしい。

 恥の上塗り。



「あなたってほんとにわかりやすいわね。好きになっちゃったの? どうして?」


 キュルケがわたしの目を覗き込みながら、そう尋ねてきた。


 好きになる?

 誰が? わたしが?

 誰を? あの犬を?


 ありえない。



「す、好きなんかじゃないわ。
 好きなのはあんたでしょ? あんなバカの、どこがいいのかしんないけど」


 そう、本当に、あんなバカのどこがいいっていうんだろう。

 自分のプライドのために、死ぬ一歩手前まで意地を張るよう
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