複雑明快な連逢事情
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かべ、いつもと違い、隣に座ってきた。
「み、見ればわかるでしょ。読書よ、読書」
「見てもわかんないわよ。
その本、真っ白じゃないの」
「これは、『始祖の祈祷書』っていう国宝なのよ」
「国宝? なら、なんであなたがそんなもの持ってるの?」
なし崩しに、しかたなくキュルケに説明する。
姫さまの結婚式で、自分が詔を詠みあげる巫女に選ばれたこと。
その際、この『始祖の祈祷書』を用いなければならないこと。
云々。
「なるほどねぇ。
……ねえ、ルイズ。
その王女の結婚式と、この前のアルビオン行きって関係してるでしょ?」
散々、あれは密命だと繰り返したはずなのだけど。
そう大っぴらに訊ねないでほしい。
まあ、間髪入れずにキュルケならいいか、と思ってしまう自分もお相子なんだろうけど。
宿敵ツェルプストーとは言え、相手は恩人なのだから。
この程度のことなら、肯いておいても支障はないだろう。
「あたしたちは、王女の結婚が無事行われるべく、危険を冒してたってわけね。
てことは、こないだ発表された二国フランク同盟が絡んでるんでしょ?」
毎度ながら、色恋の絡んでいることに関しては、キュルケの嗅覚は異様なほど鋭い。
「……誰にも言っちゃダメなんだからね」
「言うわけないじゃない、あたしはギーシュみたくおしゃべりじゃないもの。
……って言っても、ギーシュも今回は口噤んでるけど……ま、それは置いといて」
キュルケが、ゆるりと肩に手を回してきた。
「二人の祖国が同盟を結んだことだし、あたしたちもこれからは仲良くしないとね? ラ・ヴァリエール」
何を今さら、と言いたい。
正直わだかまりなど……腐るほどあったが、アルビオンを脱出した日にそんなものはすっかり風に飛ばされてしまった。
ていうか、昨日わたしと食事の譲り合いしてたのはどこの誰よ。
「聞いた? アルビオンの新政府が、不可侵条約を持ちかけてきたって話。
あたしたちがもたらした、平和に乾杯」
杯なんか持ってないし、そんな気にはなれない。
その平和のために、姫殿下は恋人を捨てさせられ、好きでもなんでもない皇帝の許へ嫁がせられるのだから。
仕方がないと言ってしまえばそれまでだが、明るい気分にはどうやってもなれそうにない。
それを言外に悟ったらしいキュルケは、少しバツが悪そうに話を換えてきた。
「ところで、何を編んでたの?」
って、なんでそっちに変えるの?
「べ、べべベツニ何も編んで
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