複雑明快な連逢事情
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ってるのよ!」――っ」
弁解する気とか、その他諸々ひっくるめて。
一気に冷めた。
そうか、そりゃ確かに誤解でもなんでもねえな。
そうかそうか、こいつが怒ってんのは『俺が』シエスタともつれてるのを見たからじゃなくて、『平民が』自分のベッドの上に居たからか。
――そうかよ。
「わかった。じゃあな」
込み上げる寂寥感を無視し、そう憮然と言い捨てて、"藁束"に置いてたデルフだけを引っ掴んで、さっきシエスタが開け放ったままの扉に向かう。
「わかったら早く出てって。
あんたの顔なんか、もう見たくも無いわ」
そう背中から掛けられる声に、
「奇遇だな。俺もだよ」
込み上げた虚しさをありったけ乗せて、腹の底から返事を絞り出した。
シエスタが来るまでに考えていたことも、ひっくるめて。
どうでもよくなった。
一人部屋に残されたルイズは、ベッドの上に倒れこんだ。
まだ微かに暖かさが残る毛布の表面に苛立ちを募らせ、端っこをひっつかんで内に篭もる。
ひどい、と。
煮えたぎった頭で、ルイズは思考を回す。
テーブルの上、広げられた料理の数々が視界に入り、さらにルイズの頭は煮える。
疑心暗鬼はその仕事をサボらない。
メイドを押し倒したのは、今日だけではなかったのではないか、と。
もしかして今まで食事を与えられた日には、いつもあんなことをしていたのではないかと。
"まさか"は止める者もいないままに"きっと"に変わり、やがて真逆まさかの"間違いない"へと昇華した。
ひどい、と思った。
赦せない、とも思った。
なに一つの裏付けも無いまま、ルイズの中うちで才人は嘘吐きへと評価を貶おとされていった。
ルイズの心中では、一つの思いが堂々廻りに廻まわっていた。
「……慰めたくせに。
守りたいって、言ったくせに。
なによ、バカ。だいっきらい」
思いは、ルイズの意思とは関係なく口を割り続けた。
「――だいっきらい」
目からこぼれ続ける、雫と同じように。
才人はルイズの偽ウソを知らない。
ルイズは才人の真ホントを知らない。
ただそれだけの、擦れ違いエラーだった。
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