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fate/vacant zero
複雑明快な連逢事情
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気だよ、うん」


 ごしごしと腕で顔を拭い、誤魔化すように料理に手をつけた。


 うん、美味い。

 腹が減ってないのが、残念になるくらい美味いなあ。



「懐かしい……?
 サイトさん、東方ロバ・アル・カリイエのご出身なんですか?」


 どこそれ。



「さっきも言ってたけど、その……えーと。驢馬ロバいる刈かりいれだっけ?」

「東方ロバ・アル・カリイエですわ」

「そうそう、それなんだけど。それってどこにあるの?」


 はてと首を傾げたシエスタはややあって、ぽんと手を打ち鳴らした。



「そっか、サイトさん召喚されたんですよね。

 えっと、ここからずっと南東、とっても強くて怖い森人エルフの棲まう砂漠の、さらに東にあるって言われてる国のことです。
 時々、ゲルマニアやガリアの方から僅かな行商人が、こうやって珍しい食べ物や道具なんかを仕入れてくるんですよ」


 南東、ね。


 ……日本おれのせかいに帰る手掛かり、なのか?

 いや、ただよく似てるだけの飲み物って可能性も……。



「あの、おいしくなかったですか……?」


 おう、わーにん。

 シエスタが涙目だ、考えごと中断。


 どうも考えごとで手が止まってたのを勘違いされた模様、即急に任務を続行せよ、いぇっさー。



「そ、そんなことないって!
 美味しいよ! うん、すごく美味い!」


 がががががっと食べ掛けだったピラフもどきを平らげてみせる。


 任務成功みっしょんこんぷりーと、次の任務に当たれ。

 いぇっさー、ナニカのムニエルに吶喊とっかんします。


 ちらっと視線をシエスタに向けてみれば、なにやらじーっと俺の食べる様を見ていた。

 き、気恥ずかしい。



「えと、食い方汚いかな?」


 そう訊ねると、シエスタはぼふっと湯気を上げて、わたわたと手を振り出した。



「そ、そんなことないです!
 逆です、そんな風に一生懸命に食べてもらったら、お料理も、作った人も幸せだなぁ、って!」

「そ、そっか」


 既にシエスタの顔は心配になるくらい真っ赤になっている。

 ……マジに大丈夫か。



「その、それ、わたしが作ったんです……」


 そうぽそっと聞こえた。

 え、これシエスタの手料理?



「そ、そうなの?」

「ええ、ちょっと料理長に無理言って、厨房に立たせてもらったんです。
 こうやってサイトさんが食べてくれてるのを見てると、お願いした甲斐がありました」


 そう言ってはにかむシエスタに、胸が詰まったような錯覚を覚えた。

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