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fate/vacant zero
禁断の果実
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 老オスマンは、目の前の机に存在する一冊の本を眺めながら、しきりに首を傾げていた。

 革の装丁がなされた表紙はひどくボロボロで、触っただけでも破れてしまいそうなほど古びている。

 羊皮紙で綴られた分厚い頁なかみは、これも経年劣化によるものか、色褪せて茶色くくすんでしまっている。



「これがトリステイン王室に伝わる、『始祖の祈祷書』か……」


 二千年前に始祖ブリミルが神に祈りを捧げるため詠み上げた呪文を、始祖自ら事細かに書き記した経典だ。



 と、伝承にはあるのだが。



「――紛い物か?
 いや、それにしても酷い出来じゃな……。

 歴史だけは無駄に刻んでおるようじゃが、中身がこれではの」


 老オスマンは、胡散臭げにパラパラとその頁ページをめくる。

 およそ300頁ページはあるかというこの本の中身は、どこまでいっても真っ白であった。



「紛い物だとしたらこれを製本した者は単なるバカじゃし、これが仮に本物であったなら……。
 始祖ブリミルが、筆不精だったという証拠品になるのかのう?」


 この本『始祖の祈祷書』は、いかんせんあまりにも贋物にせものが多い。

 一冊しかないはずの『始祖の祈祷書』は、その全てを集めると保管に一つの図書館が必要になると言われるほど、世界各地に存在している。


 老オスマンは若い頃、旅先で何度か『始祖の祈祷書』を見たことがあった。

 まだそれらの方が、よっぽど祈祷書らしい体裁ていさいを整えていたと思う。

 ちゃんとルーン文字が紙面に躍り、それらを読むことができたのだから。


 いずれも贋物だったが、今、目の前にあるこの本よりはよほど本物らしかった。


 首を傾げ続けていると、こつこつとノックの音がした。

 そろそろ次の秘書を雇わねばならんな、と思いながら。



「鍵は掛かっておらぬ。入ってきなさい」


 老オスマンは、来室を促した。









Fate/vacant Zero

第二十二章 禁断ちえの果実み







 扉を開き入ってきたのは、桃色金髪ブロンドの髪と大粒の柘榴石ガーネットのタンブルに飾られた、一人のスレンダーな少女。

 ルイズであった。



「わたくしをお呼びと聞いたのですが……」

「おお、ミス・ヴァリエール。旅の疲れは癒せたかな?」


 老オスマンは両手を拡げて立ち上がると、この小さな来訪者を改めて労ねぎらった。



「思い返すだけでも辛かろう。
 じゃが、おぬしたちの活躍によって軍事同盟は無事締結された。
 トリステ
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