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fate/vacant zero
禁断の果実
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本語で聞こえてきた。

 それに気付いた時、奇妙な疑問が脳裏に浮かんだ。


 タバサがこの世界ハルケギニアの言葉を話しているのは、多分間違いない。

 でも、その言葉は俺の頭の中では日本語として認識されている。



 なら俺は?



 頭の中でも口からも、日本語を話しているつもりの俺は一体、今、何語を話しているんだろう?

 それはタバサには、どう聞こえているんだろう?





 ……異変はなおも続く。


 そうしていくらかの単語を教えてもらい、いざさっきの文章を読んでみようと、再びミミズがのたくっていたはずの文面に目を落とした。

 そこにあったのは。


 たどたどしかったり、至るところにミミズを挟んだりしてはいるが、虫食いのように出現しているそれは。



 紛れも無く、漢字仮名混じり文。

 日本語の文章が、そこにあった。



 いや、目を凝らしてみれば、そこには確かにミミズしか並んでいないんだ。

 でも、そうして意識して"文字"を視てみないと、文章は勝手に日本語に化けてしまう。


 かなり謎極まりない現象が俺の身には起きているようだったが、そんなものだからある程度単語を教わってからは速かった。


 ついでに言えば、楽だった。



 俺がその言葉を日本語として認識すれば、その単語の部分は日本語へと変わっていくのだから。





 そうして一時間も経った頃には、教科書として使っていた本など、ほぼ完璧な日本語の本に化けてしまっていた。

 その本を初めから終わりまで朗読していく内、タバサが抑揚の変わらぬ、それでいて不思議そうな声を上げた。



「どういうこと?」

「え?」


 タバサはたった今、俺が読み上げた一文を指差す。



「ここには、"わたしがきみの魂を買います"と書いてある。
 でもあなたは、"きみの罪を、わたしが償います"って読んだ」


 ……あれ?



「いや、そう読めたというか、なんというか」


 日本語の方は、"きみの罪を、わたしが償います"って書いてあるんだが。

 はて、どういうことだろう?



「ごめん、間違えてたか?」


 タバサは首を振って、それを否定した。



「あなたは間違えていない。この文章は慣用表現。
 その意味は確かに、"きみの罪を、わたしが償います"になる」


 ……諺ことわざみたいなもんだったのか。



「あなたはさっきから、書いてあることと微妙に違う文章を読んでいる。
 でも、間違えてはいない。
 むしろよく要約されて、文脈上はより的確な表現にな
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