禁断の果実
[6/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
本語で聞こえてきた。
それに気付いた時、奇妙な疑問が脳裏に浮かんだ。
タバサがこの世界ハルケギニアの言葉を話しているのは、多分間違いない。
でも、その言葉は俺の頭の中では日本語として認識されている。
なら俺は?
頭の中でも口からも、日本語を話しているつもりの俺は一体、今、何語を話しているんだろう?
それはタバサには、どう聞こえているんだろう?
……異変はなおも続く。
そうしていくらかの単語を教えてもらい、いざさっきの文章を読んでみようと、再びミミズがのたくっていたはずの文面に目を落とした。
そこにあったのは。
たどたどしかったり、至るところにミミズを挟んだりしてはいるが、虫食いのように出現しているそれは。
紛れも無く、漢字仮名混じり文。
日本語の文章が、そこにあった。
いや、目を凝らしてみれば、そこには確かにミミズしか並んでいないんだ。
でも、そうして意識して"文字"を視てみないと、文章は勝手に日本語に化けてしまう。
かなり謎極まりない現象が俺の身には起きているようだったが、そんなものだからある程度単語を教わってからは速かった。
ついでに言えば、楽だった。
俺がその言葉を日本語として認識すれば、その単語の部分は日本語へと変わっていくのだから。
そうして一時間も経った頃には、教科書として使っていた本など、ほぼ完璧な日本語の本に化けてしまっていた。
その本を初めから終わりまで朗読していく内、タバサが抑揚の変わらぬ、それでいて不思議そうな声を上げた。
「どういうこと?」
「え?」
タバサはたった今、俺が読み上げた一文を指差す。
「ここには、"わたしがきみの魂を買います"と書いてある。
でもあなたは、"きみの罪を、わたしが償います"って読んだ」
……あれ?
「いや、そう読めたというか、なんというか」
日本語の方は、"きみの罪を、わたしが償います"って書いてあるんだが。
はて、どういうことだろう?
「ごめん、間違えてたか?」
タバサは首を振って、それを否定した。
「あなたは間違えていない。この文章は慣用表現。
その意味は確かに、"きみの罪を、わたしが償います"になる」
……諺ことわざみたいなもんだったのか。
「あなたはさっきから、書いてあることと微妙に違う文章を読んでいる。
でも、間違えてはいない。
むしろよく要約されて、文脈上はより的確な表現にな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ