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fate/vacant zero
禁断の果実
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……」


 部屋の中で二人が眠りについたのを見計らって、窓の外から『飛行フライ』で中の様子を窺っていたキュルケはその場を飛び去った。



「そりゃまあ、ルイズが傷心中なのは知ってるから、あれだけなら別にいいわよ。

 あれだけだったら」


 そのままぐるりと塔を周り、壁を飛び越え、少しばかり剥むくれながら塔の真裏、自分の部屋の窓から中に飛び込む。



「でも、タバサと一緒にお風呂にまで入っておいて、その夜の内に違う女の子のベッドで平然と眠れるだなんて、どういう神経してるのかしら」


 ついでに言えば、あたしを無視して。

 あたしを無視して。二度言った。


 キュルケは、夕食にもお風呂にも姿を見せないタバサを心配して、部屋の外から様子を窺っていたのだった。

 見た感じが何やらいい雰囲気だったため、声を掛けそびれたとも言うが。


 あと、先ほどの台詞はキュルケの言えた義理ではないような気もするが、親友のこととなれば話は別らしい。



「さて、どうしたものかしらね。
 タバサの応援をしたいような、ルイズも放っておけないような……」


 困ったわねぇ、とベッドに寝転んで呟くキュルケ。

 求愛を無視され続けて揺らいでいる自分のプライドは、この際無視するようだ。


 滅多に自己主張をしない友人が、珍しく楽しそうにしているのを昼間に見たせいかもしれない。



「とりあえずは、あの二人以外がサイトに近付かないようにしないといけないわね。

 陰謀は苦手なんだけど、少し作戦練ろうかしら」



 彼女の情熱は今、自分の『恋』から、他人の『色恋沙汰』へとシフトしているようだった。






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