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fate/vacant zero
日常の定義
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ねぇ、相棒。いろんな意味で」


 正面、即席カーテンの落とされたベッドの上には、ネグリジェ姿のルイズがブラシを手にして、不審の眼差しでこっちを眺めていらっしゃった。

 騙しやがったな、デルフ。



「あんなので騙される相棒がどうかしてると思うぜ、オレっち」


 ご尤もっとも。



 いやもうホント、今日の俺はどうかしてる。

 原因なんか考えるから墓穴に埋まるんだ。


 ルイズが優しくなった。もうそれでいいじゃねえか。

 後は俺がひん剥いたことを謝っちまえば、それでいつも通りの日常が来る。



 視線の先、髪を梳き終えたルイズが杖を振って、机の上のランプを消した。

 今日は透き通った方の月が満月らしく、青白い光が煌々と窓から差し込んでいた。


 ベッドの上で身を起こしたルイズが、なんとも神秘的だ。



「ルイズ」「ねえサイト」



「「あ」」


 掛けた声が被った。





「えと、お先にどうぞ」

「そ、そうね。そうさせてもらうわ」


 こほんと、ルイズが咳払いをして。

 ちょっと間があいた。



「……ルイズ?」


 声を掛けてみると、言いにくそうにしながらもルイズが話し出した。



「その、いつまでも床、ってのはあんまりよね。
 だから、えっと、その、ベッドで寝てもいいわ」


 ――――――なんですと?



「か、勘違いしないで。へ、へ、へンなことしたら殴るんだから」


 あ、うん。


 大丈夫、俺モグラ。

 襲ったりしないシナイ。



 "原因"がスイッチになってしまったのか若干壊れながら、一歩一歩ベッドに近づき、ルイズに訊ねる。



「い、いいの? モグラ、いいの?」

「いいって言ってるじゃないの。何度も同じこと言わせないで。あと、モグラって何よ」


 ルイズは壁の方を向き、ベッドの端の方で毛布にくるまっていた。



「ごめんなしゃい」


 脊椎反射的に謝りながら、もぞもぞとルイズとは逆のベッドの端っこに潜り込んで、毛布を被る。



「『しゃい』とモグラも禁止ね。っていうか、卑屈な態度をなんとかしなさいって言ったじゃないの」

「あ、ああ」


 呆れたようにルイズに言われ、少ししゅんとする。



「それで?」


「え?」

「『え?』じゃないわよ。なんか話があるんじゃなかったの?」


 あ、そうだった。

 いや、ちょっと刺激が強すぎてうっかり記憶から引き出せなかっただけだ。


 忘れてたわけじゃないぞ?




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