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fate/vacant zero
第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
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 王都トリスタニアに、極最近に流行りだした噂がある。


 近日中に隣国アルビオンを制圧するであろう『聖邦復興同盟レコン・キスタ』。

 その次の標敵がここ、トリステインである、という噂だ。


 その噂の発端となり、素晴らしい速さで噂が王都を駆け巡った原因は、一重ひとえにブルトンネ街突き当たりの川を挟んだ向こう側。

 丘の上の王宮を守る三つの魔法衛士隊、その全体に張りつめた、このぴりぴりとした空気にある。



 普段であれば難なく潜くぐれる城門は、懇意の仕立て屋や菓子職人、貴族すらも門前で呼び止められ、身体検査、『探査サーチ』(魔法の痕跡の検査)、『解析ディテクト』(催眠状態に陥っていないかの検査)と、慎重すぎるほど慎重に審査される厳重さだ。

 おまけに王宮の上空には、幻獣、凧フネを問わずに飛行禁止の触れが出され、何者もそこを通ることは許されない。



 実はこれ、フーケが脱獄したことに起因する厳戒態勢だったりする。

 脱獄の手引きを行ったものが城下に今なお潜んでいるのではないか、というアンリエッタの懸念に因よるものだった。

 その正体はワルドだったので、こんな所で警戒を強めていてもあまり意味はないのだが、アルビオンで今朝方判明したことがその日の昼までにトリステインの首都に伝わるわけもなく。



 変わらず続く厳戒態勢の中。

 日の傾かぶいた頃、そんな非常態勢を露とも知らないタバサがシルフィードを王城前の広場に降ろそうとしたのは、無理からぬことであった。









Fate/vacant Zero

第二十章 亡国なきくにからの便たより







「――――――――――!」


 王宮を眼下にしながら降下するシルフィードと俺たちに向かって、コウモリみたいな翼を広げて飛ぶ、赤い虎みたいな獣に乗った、鎧を着た男たちが、何やら叫んでいる。



 叫んでいる、らしいんだが。


 ちょっと今飛んでいる辺りは風が強すぎて何を言ってるのかさっぱりわからない。

 ベレー帽が飛ばされないように抑えながら、ラ・ロシェールで仮面を外したタバサに顔を近づけて、どうするかを短く話しあう。



「なあタバサ」

「何」


「あの獣、何ていうんだ?」

「翼虎マンティコア」


 へえ、あれがか。

 じゃねえ。

 自重してろmy好奇心。



「あいつら何て言ってるかわかるか?」

「……(ふるふる)」


 結論。


 とりあえず話を聞くため、下に降りよう、と。



 そんなわけで、翼虎マンティコアに乗った三人ほどの……
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