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fate/vacant zero
第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
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どうやら俺は皆様方には含まれなかったようだ。

 タバサたちを謁見待合室?とやらに残して、俺とルイズはお姫さまの居室へと案内された。


 何やら細かい細工の入った椅子に座ったお姫さまが、俺たちの方を向いて、ルイズを促した。



 ルイズが、事の次第を説明し始めた。


 道中、キュルケとタバサが着いてきていたことに始まり。

 運悪く、ラ・ロシェールで足止めを喰らったこと。

 滞在した宿で翌日の夜、フーケからの襲撃を受けたこと。



「あ、ちょっとタンマ」

「なによ?」


 その時に俺とタバサが、仮面を被ったワルドの……、おそらくは、本体に襲撃されたことを補足しておく。

 フーケを脱獄させたのが、ワルドだろうということも。



「そんなことがあったのね……」

「まあ、アレがワルドだって気付いたのは、アルビオンで戦った時だったけどな」


 それらを伝え終えて、ルイズに話の続きを促す。



 アルビオンへの凧フネに乗ったら、今度は空賊に襲われたこと。

 その空賊が、王子さまだったこと。

 王子さまに亡命を勧めたが、断られたこと。


 ……ワルドが、王子さまに結婚式を頼んでいたこと。

 その結婚式の最中にワルドが豹変し、王子さまを亡き者としようとしたこと。

 ルイズの預かった手紙を奪おうと、命を狙ってきたこと。


 だがその目論見もくろみは失敗し、手紙とともに無事に戻ってきた、こと。



 こうして無事にトリステインの命綱、ゲルマニアとの同盟は息が繋がった……、のだが。

 お姫さまは、悲嘆と自己嫌悪のどん底に沈んでいた。



「あの子爵が裏切り者だったなんて……、魔法衛士隊に、裏切り者がいたなんて……」

「姫さま……」


 ルイズが、そっとお姫さまの手を包みこんだ。



「わたくしがウェールズさまを死地に追いやったようなものだわ。裏切り者を使者に選ぶなんて、わたくしは、なんということを……」

「それは違います」


 それを意識した時には、もう口が勝手に動いていた。


「王子さまは、初めから最後まで、あの国に残るつもりでした。
 お姫さまの責任じゃありませんよ」


 それが、欺瞞であっても。

 王子さまの愛した人が自分自身の手で傷ついていくのを、黙って見ていたくなかったから。


 王子さまが、お姫さまに自分のことで悲しんでほしいと思っていたなんて、思えなかったから。

 効果があったとは、思えないけど。



「あの方は、わたくしの手紙をきちんと最後まで読んでくれたのかしら。ねえ、ルイズ?」

「はい、姫さま。
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