第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
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」
誰か来たんだろうかね。
寸劇みたいな光景から逃げただけかもしれんけど。
「やはり、あなたはわたくしの一番のおともだちですわ」
二人の方に視線を戻せば、お姫さまはルイズの手をがっしと包んでいた。
「もったいないお言葉です、姫さま」
ルイズが一礼する。
それを見届け、お姫さまは俺たちの方に視線を向けると、きょろきょろ挙動不審に首を振っている。
そうして俺に視線を向けた時に少し眼まなこを大きくし、顔を曇らせた。
俺、何かしたか?
「――ウェールズさまは、やはり父王に殉じたのですね」
ああ……、そういうことか。
王子さまを、探してたんだな。
ルイズが、目を閉じて神妙に頷いた。
……俺は、王子さまからの、お姫さまに伝えるべきことがあったのを思い出した。
「して、ワルド子爵は? 姿が見えませんが……、別行動をとっているのかしら?
それとも、まさか…………、敵の手に、かかって?
そんな、あの子爵に限って、そんなはずは……」
お姫さまの顔色が、見る見る青くなっていく。
ルイズの表情も、お姫さまが言葉を紡ぐほどに暗く重く沈んでいく。
さすがに、これをルイズに話させるのは、いくらなんでも外道すぎるだろう。
なんせ、信じていた男が、今朝、突然に態度を翻して殺しにかかってきたんだから。
傷心の傷口を自分の手で抉えぐるのを黙ってみているなんて、気分悪いにも程ってもんがある。
……主人の盾が使い魔の役目らしいし、な。
仕方ない、と俺は口を開いた。
「ワルドは、裏切り者だったんです。お姫さま」
「裏切り、者?」
さーっ、と血の気の引く音が聞こえた気がする。
左右をきょどきょどと見渡しながらうろたえるお姫さま、というのはなんとも新鮮で――やめとこう、さすがに不謹慎だ。
だから自重しろ好奇心。
「彼らは、わたくしの客人ですわ。隊長どの」
「左様でございますか」
隊長はお姫さまの一言であっさりと納得すると、兵士たちを促うながして、自らの持ち場へと戻っていった。
そうしてお姫さまは、ルイズに向き直った。
「道中、何があったのですか?
……いえ、とにかく今はわたくしの部屋へ参りましょう。
他の皆様方には別室を用意します。そこでお休みになってください」
この場合、俺は他の皆様方には含まれるんだろうか。
いやまあ、含まれても、ルイズについていくけどさ。
帽子の恩恵なのかはわからないが、
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