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fate/vacant zero
第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
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な、と言いたい所だが……、貴方は?」





 アナタ?



 あの、貴族サマにそんな呼ばれ方したのは初めてなんですケド。

 なんだ、何があった。


 あ、ひょっとしてこの帽子のせいか?



「そこのルイズの使い魔ですよ」


 あんまり待たせるのも悪いので、とりあえず簡潔に答えておく。



「……使い魔だと? 何故、使い魔風情がアルビオンの王族の象徴などを……」


 ――いかん、自然に目が細まる。ちょっとかちんとキた。

 さっきこいつが敬意をもって訊ねたからか、それとも王子さまがそう言うの気にせずに話してくれてたからか。

 ともかく、こういう見下した物言いがものすげえ腹立っちまう。


 無意識に抜き身のままの――形が変わって鞘に入らなくなった――背中に吊るしたデルフの柄に手が行くが、なんだかちっちゃい手の感触がそれを抑えた。


 後ろを振り返ってみれば、回した手の袖口を掴んで、ふるりと首を振るタバサの顔。



「無闇に事を荒立てるのはよくない」


 いや、そうは言うけどさぁ……。



「ダメ、絶対」


 なんか聞き覚えのあるフレーズだこと。

 柄から手を離し、隊長(仮)に向き直れば、何やら困った顔つきになって、腕を組んで悩んでいた。



「お前たち、本当に何者だ……?」


 そう呟いている。

 何者だ、って言われてもなぁ。


「だから、密使だって言ってるでしょう」

「密使です。ぼくはグラモン家のギーシュ・アルマン」

「あたしは付き添いですわ。名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ」

「同じく、タバサ」

「さっきも言ったけど、使い魔だよ。あ、俺は平賀才人な」


 むぅ、と困り果てたように唸うなる隊長(仮)。


 ……この周りの兵士を下げてくれりゃあ、問題なくルイズも話せると思うんだけどなぁ。

 機転が利かないのかね?


 なんてちょっと失礼なことを考えてたら、



「ルイズ!」


 そんな慌あわてた調子の声が聞こえてきた。

 その声に呼応して、ルイズの顔がぱっと輝き、声の方を振り向く。



「姫さま!」


 そしてルイズと、駆け寄ってきたお姫さまは、俺たちと兵隊たちが見守る衆人環視の中、ひしっと抱き合った。



「ああ、無事に帰ってきたのね。嬉しいわ……、ルイズ、ルイズ・フランソワーズ……」

「姫さま……」


 二人の目から、ぽろりと涙がこぼれる。

 兵士の何人かが、そこで門の方へと戻っていった。



「件くだんの手紙は、無事、このとおりでございます
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